小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児固形臓器移植後のCOVID-19

 免疫不全状態の患者さんにとって、COVID-19は重症化しやすいことが知られています。成人の固形臓器移植後の患者さんが、COVID-19を発症すると死亡率が上昇するという報告は多くあります。小児の固形臓器移植後のCOVID-19については、あまり報告がなかったのですが、米国からの報告が出ました。重症化した症例は無さそうで、少し安心できる結果です。
 
要点
・患者数は少ないものの、固形臓器移植後(心臓・腎臓・肝臓)の小児がCOVID-19を発症しても、重症化が特に多いことは無さそう。
 
COVID-19 infection in pediatric solid organ transplant patients
Pediatr Transplant . 2022 Mar;26(2):e14156.
 
背景
 成人の固形臓器移植後(SOT)患者は、一般集団と比較して、COVID-19による死亡率が高いことが示されている。小児SOT患者の転帰に関するデータはほとんどない。
 
方法
 小児のSOT(心臓、肝臓、腎臓)患者におけるCOVID-19の有病率と転帰を調査する横断的研究を行った。患者背景、臨床的特徴、COVID-19診断のための検査(PCRまたは抗体検査)結果を診療録から抽出した。臨床的特徴を、COVID-19患者と感染が証明されなかった患者で,Mann-Whitney,Studentのt検定,またはカイ二乗検定を用いて比較した.p値<.05で統計学的有意差があるとした。
 
結果
 対象の患者は108名であった。年齢中央値は13.1歳(8.4歳−17.8歳)、移植後中央値4.2年(2.7年−7.9年)であった。PCRまたは抗体検査によりCOVID-19を診断した。PCRで10人(9.3%)の陽性が確認され、抗体検査では12人(11.1%)の陽性が確認された。陽性と判定された患者は、心臓移植患者9/50名(18%)、腎臓移植患者6/68名(8.8%)、肝移植患者7/50名(14%)であった。COVID-19感染者と非感染者の臨床的特徴に差はなかった。全例が、無症状(50%)または自然治癒した。免疫抑制剤のレジメン変更は行われなかった。入院した患者は1名のみで、酸素吸入を必要とした患者はいなかった。
 
結論
 小児SOT患者において、COVID-19感染は無症状または軽症であった。本研究は、臨床医がSOT患者や家族にカウンセリングを行う際に役立つと思われる。
 
 
症状に関して、本文中の記載です。
50%が無症状。発熱5名、鼻閉・咳嗽6名、頭痛3名、腹痛・下痢5名、味覚・嗅覚障害2名でした。入院した1名は生後12ヶ月の男児。胆道閉鎖症に対して肝移植後であった。発熱、鼻閉、咳嗽があり、入院したが、48時間で退院した。