小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

5−11歳の小児におけるファイザーワクチンの有効性

 新型コロナウイルス感染症やワクチンについて、目まぐるしい速度でエビデンスが生まれています。小児科学会が、5−17歳の小児に対するワクチンを「推奨」に変更したことは大きなニュースです。
 
 「推奨」への変更の根拠となった理由として、小児のCOVID-19重症化を減らす、感染を減らすエビデンスがそろってきたことがあります。今日紹介するのはシンガポールのデータです。ファイザーワクチンを2回接種することにより、下記のことが分かりました。
PCR陽性の新型コロナ感染は、65%減少
・COVID-19による入院は、82%減少
 
 オミクロン株に対しても、ファイザーのコロナワクチンは有効でした。
Effectiveness of BNT162b2 Vaccine against Omicron in Children 5 to 11 Years of Age
N Engl J Med 2022; 387:525-532
 
背景
新型コロナウイルスSARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン)変異体は、2021年11月に初めて同定され、世界中で急速に拡大した。多くの国で、B.1.617.2(デルタ)変異体に代わって優勢になっている。しかし、小児におけるオミクロン株に対するワクチンの有効性に関するデータは不足している。
 
方法
 オミクロン株が急速に拡大した2022年1月21日から4月8日に本研究を実施した。シンガポールの5歳−11歳の小児のデータを解析した。ワクチン未接種、部分接種(ワクチン初回接種1 日後〜2 回目接種6 日後)、完全接種(2 回目接種後 7 日以上)に分類した。報告されたすべての SARS-CoV-2 感染(PCR測定法、迅速抗原検査,または両方で確認)、PCR陽性のSARS-CoV-2 感染、Covid-19関連の入院を、ワクチンの接種状況毎に評価した。ポアソン回帰を用いて、アウトカムの発生率比からワクチンの有効性を推定した。
 
結果
 合計255,936人の小児が解析に含まれた。ワクチン未接種の小児では、報告された全SARS-CoV-2感染、PCR陽性SARS-CoV-2感染、Covid-19関連入院の粗発生率は、100万人日あたり3303.5、473.8、30.0人であった。部分接種のワクチン効果は、全SARS-CoV-2 感染に対して 13.6%(95%CI, 11.7−15.5)、PCR陽性SARS-CoV-2 感染に対して 24.3%(95% CI, 19.5−28.9)、Covid-19関連入院に対して42.7%(95% CI, 24.5−28.9) であった。完全接種では、ワクチン効果は各々 36.8%(95% CI,35.3−38.2)、65.3%(95% CI,62.0−68.3)、82.7%(95% CI,74.8−88.2 )であった。
 
結論
 オミクロン株が優勢であった期間、BNT162b2 ワクチン(ファイザーワクチン)接種により、5 − 11 歳の小児における SARS-CoV-2 感染および Covid-19 関連の入院のリスクが低下した。
 

 

1 million person-daysあたりの感染数・入院数
グループ
すべての感染
PCR陽性
入院
未接種
3303.5
473.8
30.0
1回接種
2997.3
391.2
19.1
2回接種
2770.3
111.8
5.5
 
2回接種のワクチン効果
 
ワクチン効果 (95% CI)
すべてのSARS-CoV-2感染
36.8% (35.3-38.2)
PCR陽性SARS-CoV-2感染
65.3% (62.0-68.3)
COVID-19による入院
82.7% (74.8-88.2)