日本では、現状ではCOVID-19の流行は落ち着いていますが、毎年冬と夏の2回の流行が定着してきたように思います。改めて、小児における重症化リスクを大規模データから導き出した検討です。
オミクロン株になり、更に重症化リスクは減っていると思いますが、一定数重症化するので、注意は必要です。
Risk Factors for Severe COVID-19 in Children.
(小児におけるCOVID-19重症化のリスク因子)
Pediatrics. 2022 Jan 1;149(1):e2021053418.
背景
この研究は、COVID-19に関連する小児の重症化リスクを評価することを目的としています。COVID-19による入院小児の重症化(ICU入室、人工呼吸器使用、または死亡)のリスク要因を特定し、重症化率を算出しました。これまでの研究では、地域的またはパンデミック初期のデータに基づくものが多く、より広範なデータを用いた分析が求められていました。
方法
研究はCOVID-NET(COVID-19関連入院監視ネットワーク)を用い、2020年3月から2021年5月までに米国14州で入院した3106人の小児を対象に行われました。2293人の主にCOVID-19を理由とする入院患者のデータが分析対象とされ、多変量解析を用いて年齢、性別、基礎疾患などのリスク要因との関連を評価しました。また、人口ベースの重症化率を計算し、年齢、性別、人種・民族別に比較しました。
結果
- 重症化率
約30%の入院患者が重症化し、全体で0.5%が入院中に死亡しました。重症化率は年齢や人種で異なり、特に12か月未満の乳児、ヒスパニック系および非ヒスパニック系黒人の子どもで高い傾向が見られました。
- リスク要因
1. 2歳未満の小児では、慢性肺疾患(リスク比[aRR]:2.2)、神経疾患(aRR:2.0)、心血管疾患(aRR:1.7)、未熟児(aRR:1.6)、気道異常(aRR:1.6)が重症化リスクと関連しました。
2. 2~17歳の小児では、経管栄養状態(aRR:2.0)、糖尿病(aRR:1.9)、肥満(aRR:1.2)がリスク要因とされました。
- 人口ベースの重症化率
入院率は全体で43.2/10万人、重症化率は12.0/10万人でした。これらの率は12か月未満の乳児、ヒスパニック系および非ヒスパニック系黒人で最も高い結果となりました。
考察
この研究は、小児のCOVID-19重症化におけるリスク要因を明らかにし、予防策(ワクチン接種など)や臨床的意思決定に役立つ情報を提供しました。また、パンデミックの進行やワクチン普及、新しいウイルス変異株の出現に伴う疾病動向の基準として利用されることが期待されます。基礎疾患が重症化リスクを高めることが改めて確認され、特に肥満や糖尿病、神経疾患などの重要性が示されました。
この研究は、地域や医療資源の差異を超えた広範なデータを用いており、結果の信頼性が高いと考えられます。一方で、医療記録の不備や各病院間のICU入室基準の違いがデータ解釈に影響を及ぼしている可能性もあります。今後、さらなる研究により、リスク要因の詳細や予防策の効果が解明されることが期待されます。