腸内環境を整えることが、最近(?)話題です。ヨーグルトや乳酸菌飲料など色々なものにプロバイオティクスが含まれ、健康に良いと言われています。私も、下痢の子に、色々なプロバイオティクス製剤を処方しますが、その効果はすごくあるとは言いませんが、まあ、ちょっと良いかな…くらいに感じます。
プロバイオティクスと似た言葉にプレバイオティクスとシンバイオティクスがあります。それぞれの用語の確認です。
・プロバイオティクス:「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に有益に働く生きた微生物」と定義されています。つまり、腸内環境を良くすることによって私たちの健康に役立つ微生物がプロバイオティクスです。納豆やヨーグルトに入っている菌などが該当します。
・プレバイオティクス:「大腸の特定の細菌を増殖させることなどにより、宿主に有益に働く食品成分」と定義されています。プレバイオティクスは有用な腸内細菌の餌となる食品成分を摂取することによって腸内環境を改善するということです。
・シンバイオティクス:シンバイオティクス(synbiotics)は、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたものです。腸内フローラのバランスを整える生きた菌であるプロバイオティクスと、腸内の有用な菌の餌となるプレバイオティクスを同時に摂取することで、より効果的に腸内環境を改善し、健康増進に役立つと考えられています。
(ダノン健康栄養財団HPより)
早産児の重篤な合併症に壊死性腸炎(NEC)という病気があります。プロバイオティクスの接種により、NECが予防できるかという研究が多く実施され、システマティックレビュー論文が出ました。
Probiotics, Prebiotics, Lactoferrin, and Combination Products for Prevention of Mortality and Morbidity in Preterm Infants: A Systematic Review and Network Meta-Analysis.
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死亡
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敗血症
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腸管栄養失敗
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完全経腸栄養達成までの期間
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入院期間
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複数菌プロバイオティクス
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減少
RR 0.69
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減少
RR 0.38
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減少
RR 0.61
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短縮
−2.03日
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短縮
−3.31日
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複数菌プロバイオティクス+オリゴ糖
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減少
RR 0.13
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減少
0.45
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単一菌プロバイオティクス+ラクトフェリン
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減少
RR 0.33
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単一菌プロバイオティクス
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減少
RR 0.61
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短縮
−1.94日
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短縮
−2.20日
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さて、問題はここからです。
実は、米国FDAが2023年9月29日に警告を出しました。
MCTオイルにEvivoというプロバイオティクスを一緒に投与された未熟児が、Bifidobacterium longumの菌血症を発症して、亡くなったというものです。
米国小児科学会は、「米国にはFDAの規制を受けた医薬品グレードの製品がないこと、安全性と有効性に関する相反するデータがあること、非常に脆弱な集団に害を及ぼす可能性があることを考慮すると、現時点で、早産児、特に出生体重1000g未満の乳児にプロバイオティクスをルーチンで普遍的に投与することを支持しない」と述べている
未熟児医療全体で見ると、プロバイオティクスはプラスの面もありますが、時に重篤な菌血症を起こしうる製剤であることを認識する必要があります。