小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

子供だって新型コロナ後遺症は起こりうる

 新型コロナウイルスの患者さんが増加するにつれて、後遺症の報告が増えてきています。Long COVIDといわれ、一部の報告には、2割の患者さんが後遺症を経験するという報告もあります。症状は多彩で、倦怠感、呼吸苦、関節痛、脱毛などなどです。

(忽那先生がまとめられています)

news.yahoo.co.jp

 

 一方で、小児の新型コロナ後遺症は、ほとんど報告がありませんでした。スウェーデンからですが、小児でも、後遺症を残す症例が5例報告されました。

 いずれの症例も、思春期で、女児が多く初期から多彩な症状があり、様々な症状が6ヶ月以上続いています。そのため、学校に行けないなど、社会的にも大きな影響が出ています。

 小児では、まれな事例とは思われますが、今後、感染者が増加すると、日本でも新型コロナ後遺症の小児例が増えてくる可能性があります。それを防ぐためには、感染者を増やさないことが一番です。

 首都圏には緊急事態宣言が出ましたが、それ以外の地域でも、マスク・手指衛生など基本的な感染対策を実施し、ソーシャルディスタンスを維持していただくようお願いします。

 

 
Case report and systematic review suggest that children may experience similar long-term effects to adults after clinical COVID-19
Ludvigsson JF. Acta Pediatr. 2020 Nov 17; 10.1111/apa.15673.
 
目的:
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した後、成人では症状が持続する事があり、long COVIDという用語が出てきている。しかし、long COVIDの小児のデータは乏しい。
 
方法:
 本論文では、小児におけるCOVID-19罹患後の持続する症状を検討した。スウェーデンの小児5例で見られた長期的な症状を報告する。また、MEDLINE、EMBASE、Web of Scienceデータベース、medRxiv/bioRxivプレプリントサーバーの2020年11月2日までの文献レビューを行った。
 
結果:
 Long COVIDの可能性のある5例は、年齢中央値が12歳(範囲9~15歳)で、4例は女児であった。COVID-19の臨床診断を受けてから6~8カ月間症状が持続した。診断時には5例とも入院しなかったが、1人は後に心外膜炎で入院した。全例で、倦怠感、呼吸困難、動悸、胸痛が認められた。4例は頭痛、集中困難、筋力低下、めまい、咽頭痛が認められた。何例かは6-8ヶ月後に改善したが、倦怠感のため学校に完全に復帰した者はいなかった。文献レビューでは179の論文が確認された。そのうち19本が関連性があると判断された。しかし、小児におけるlong COVIDに関する情報は一切含まれていなかった。
 
結論:
 小児は成人と同様のlong COVIDを経験する可能性があり、女性の方が影響を受けやすい。
 
 
 
患者1
患者2
患者3
患者4
患者5
性別/年齢
女児13歳
女児12歳
男児11歳
女児9歳
女児15歳
持続期間
6.5ヶ月
7ヶ月
6ヶ月
8ヶ月
8ヶ月
初期症状
発熱・腹痛・上気道症状・倦怠感・味覚嗅覚障害
発熱・腹痛・頭痛・味覚嗅覚障害・呼吸困難・倦怠感・めまい
頭痛・咽頭痛・倦怠感・口渇感・腹痛・下痢・嘔気・食思不振・味覚嗅覚障害
発熱・下痢・頭痛・腹痛・嘔気・呼吸困難
発熱・頭痛・咽頭痛・呼吸困難・胸痛・倦怠感
Long COVID
3ヶ月間臥床、皮疹、腕の痛み、感覚過敏
抑うつ、腹痛、自閉症症状の悪化(もともと自閉症)、チック、心外膜炎
嗅覚・味覚異常、食欲低下、嘔気、腹痛、便秘、倦怠感、微熱、リンパ節腫脹、胸痛、皮疹、感覚過敏、関節痛、めまい、背部痛、頻脈
胸痛、感覚鈍麻、発熱、嘔気、腹痛、倦怠感、呼吸困難
呼吸困難、胸痛、めまい、認知機能低下
学校
部分的に登校
階段登れない
遠隔授業
約半分は参加
部分的に登校
残りは遠隔授業
約半分は登校
3ヶ月は参加できず、今は主に遠隔授業