小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児新型コロナウイルス罹患後の後遺症

再び、新型コロナウイルス感染症の患者数が増加しています。第6波では、小児例がとても多く、当院でも多くの方が入院しました。罹患後になかなか体調が元通りに戻らないお子さんもおり、長期的な影響が心配されます。

この研究は、アメリカの小児施設で、COVID-19とMIS-C(多系統炎症性症候群)罹患後の後遺症を調べたものです。

要点

・COVID-19罹患後の26%、MIS-C罹患後の30%の患者に、2ヶ月以上続く症状や活動障害が認められる。

・呼吸器系基礎疾患や肥満があると、その頻度は更に高い。

 

 入院患者が対象なので、ある程度の重症例がメインになりますが、小児でも後遺症を発症する可能性があり、罹患しないようにできる対策はすべて講じるべきです。

Health Impairments in Children and Adolescents After Hospitalization for Acute COVID-19 or MIS-C
Pediatrics . 2022 Jun 29. doi: 10.1542/peds.2022-057798. Online ahead of print.
 
目的
 小児において、COVID-19 または小児多系統炎症性症候群(MIS-C)による入院後の後遺症の危険因子を評価すること。
 
方法
 米国の25ヶ所の小児医療施設2で実施された多施設共同前向き観察コホート研究である。21歳未満で、2020年5月〜2021年5月にCOVID-19またはMIS-Cで入院し、入院から2~4か月経過した患者を対象とした。再入院、持続的な症状や活動障害、機能状態評価尺度によって特定される後遺症を評価した。多変量回帰を用いて、調整リスク比(aRR)を算出した。
 
結果
 対象患者358名のうち、COVID-19の119/155名(76.8%)およびMIS-Cの160/203名(78.8%)で2-4か月間の調査データが得られた。再入院はCOVID-19で13例(11%)、MIS-Cで12例(8%)であった。COVID-19の32例(26.9%)に持続的な症状(22.7%)または活動障害(14.3%)を認め、MIS-Cの48例(30.0%)に持続的な症状(20.0%)または活動障害(21.3%)を認めた。COVID-19患者では、持続的な症状(aRR,1.29[95%CI,1.04-1.59])および活動障害(aRR,1.37[95%CI,1.06-1.78])は、臓器障害の程度と関連していた。MIS-Cと呼吸器の基礎疾患を持つ患者は、持続的な症状を呈する事が多く(aRR, 3.09[95% CI, 1.55-6.14] )、肥満患者は活動障害が多かった(aRR, 2.52[95% CI, 1.35-4.69])。
 
結論
 COVID-19またはMIS-Cの入院患者の4人に1人は、少なくとも2か月間、症状や活動障害が持続していた。MIS-C、呼吸器疾患、肥満患者は,症状が長引くリスクが高い。