小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

新生児・乳児のCOVID-19

 新生児や乳児のCOVID-19はリスクが高いと考えられていますが、実際には、それほど悪くないようです。自験例でも、新生児・乳児での悪化例は、ほとんど経験がないです。
 アラブ首長国連邦からの報告です。
要点
・新生児・乳児のCOVID-19は症状の持続期間も短く・経過が良い
ICU入院を要するのは2%以下。
 
Clinical Outcomes of COVID-19 in Newborns and Infants: A Multicenter Experience of 576 Cases.
Pediatr Infect Dis J. 2023 Jun 1;42(6):515-519.
 
はじめに
 乳幼児における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の臨床像、臨床経過、転帰に関する報告は少ない。
 
方法
 アラブ首長国連邦UAE)の小児医療施設で、新生児と乳児を対象に、COVID-19に罹患した患者の背景、臨床的特徴、検査、治療、転帰を評価するために後方視的研究を実施した。臨床症状と検査値の中で、集中治療室(ICU)入院や死亡を予測する精度の高い所見について評価した。
 
結果
 合計576人のCOVID-19陽性の新生児・乳児が対象になった。平均日齢は164日であった。症状の平均持続日数は、1.48日であった。発熱は36.5%に認められ、44.3%に鼻づまりが認められた。8例(1.39%)が、呼吸窮迫のためにICU入院を必要とし、2例が侵襲的人工呼吸管理を要した。有症状(発熱、鼻づまり)の乳児がICUに移される可能性は高いというわけではなかった(P = 0.77)。ICU入院症例は、抗菌薬を投与される確率が高かった(70.6% vs 35.4%、P = 0.003)。多変量解析では、臨床的特徴(年齢、症状、検査値)の中でICU入院を予測するものはなかった。死亡例は報告されていない。
 
結論
 COVID-19の乳児は、良好な臨床経過・転帰をたどる。ICU入院を必要とするのは2%未満であった。ICU入院を予測するパラメータはなく、注意深く臨床症状を監視することが必要である。
 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov