小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

MIS-C(小児COVID-19関連多系統炎症性症候群)の中期予後

 国内でのオミクロン株の流行により、2022年3月現在、小児のCOVID-19患者が増加しています。それに伴い、重症例も増加し、小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C)の症例も増加しています。
 MIS-Cはすでに米国で6000例以上が報告されている、川崎病に類似した疾患です。COVID-19を発症後2−6週間で、発熱・皮疹・イチゴ舌などの川崎病に似た症状を呈し、ショックになり集中治療を要することがあります。
 中には、冠動脈病変や左室収縮機能低下をきたすことがあり、ガンマグロブリンやすロイドなどが有効なことが分かってきています。
 しかし、中長期的な予後については不明な点が多く、後遺症が残存するのか、気になることろでした。
 この研究は、米国の小児病院で治療を受けた50名(年齢中央値 8.5歳)の患者について、発症後6ヶ月までをフォローした報告です。
 
要点
・殆どの症例が、ガンマグロブリン投与を受けた。
・集中治療を要した症例は多い。
・左室収縮機能低下や冠動脈拡張は、発症後8週間で消失した。
・左室拡張機能低下が残る症例が少数あるが、臨床的な意義は不明。
Six Month Follow-up of Patients With Multi-System Inflammatory Syndrome in Children
Pediatrics . 2021 Oct;148(4):e2021050973.
 
背景
 小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C)では、心筋障害や冠動脈の異常が特徴的である。本研究では、MIS-Cの早期および中期的の転帰を評価することを目的とした。
 
方法
 本研究は、2020年4月17日から6月20日にMIS-CでCohen Medical Center (NY)に入院し、治療を行った全小児例を対象とした6ヶ月間の縦断的コホート研究である。患者は入院後∼2週間、8週間、6ヶ月間のタイミングでフォローアップされ、冠動脈瘤のある患者はより頻繁に評価された。
 
結果
 急性期には、31例(62%)が血管作動薬のサポートによる集中治療を必要とした。26例(52%)が左室(LV)収縮機能障害、16例(32%)がLV拡張機能障害、8例(16%)が冠動脈瘤(z score ≥2.5)、4例(8%)が冠動脈拡張(z score <2.5)を呈した。合計48人(96%)の患者が免疫調節薬(ガンマグロブリンなど)の投与を受けた。2 週間後のフォローで、1 名に軽度の LV 収縮機能不全、2 名に冠動脈瘤、1 名に冠動脈の拡張が持続した。8 週間から 6 ヵ月後までには、すべての患者が LV 収縮機能は正常化し、冠動脈拡張・瘤は消失し、冠動脈の直径はベースラインに改善した。一部の患者で回復期に心臓MRIを実施した。心筋の浮腫や線維化は認められなかった。一部の患者では、2週間後(5名、11%)、8週間後(4名、9%)、6ヵ月後(1名、4%)に持続的な左室拡張機能不全が認められた。
 
結論
 MIS-C症例に対して免疫調節薬を投与した場合、死亡例はなく、LV収縮機能は正常化し、冠動脈の異常所見は回復し、心臓MRIで炎症や瘢痕は認められなかった。本研究では、良好な早期転帰が得られた。拡張機能障害が持続する点に関しては、臨床的意義が不明であり、MIS-Cの理解を深めるために、より大規模な研究が必要であろう。本研究で得られた知見は、臨床的な管理、患者のフォローアップ外来、運動制限解除への配慮の指針になると思われる。
 
治療薬について
治療
症例数 (n=50)
48
35
生物学的製剤
13
46
エノキサパリン
23

 

エコー所見の経時的変化

エコー所見
急性期
2週間
8週間
6ヶ月
冠動脈異常所見
52%
27%
14%
0%
LAD/RCA z score ≧2.5
16%
4%
0%
0%
左室収縮機能低下
52%
2%
0%
0%
左室拡張機能障害
32%
11%
9%
4%

 

LVEFの経時的変化(赤線は正常下限)

f:id:PedsID:20220322063719p:plain

 

冠動脈の直径の経時的変化 z score (赤線は正常上限)

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