日本でも、外注検査会社で、新型コロナウイルスの抗体検査(IgMとIgG)が実施可能になっています。抗体価は、上昇まで時間を要するので、急性期の診断には使用できませんし、陽性になる頃には、発症10日以上を経過しており、周囲への感染のリスクも低いので、検査をしても「感染していた事実を確認するだけ」になります。
この研究は、発症初期から後期になるまで、時系列的にPCRと抗体価の陽性率を検討したものです。すごく新しい知見では無いかもしれませんが、図が分かりやすく、両者の検査の特徴がよくわかります。
要点
・COVID-19発症から1週間以内は抗体は陽性率が低く(40%未満)、PCR検査の方が感度が良い(感度は70%程度)。
Antibody Responses to SARS-CoV-2 in Patients With Novel Coronavirus Disease 2019
Zhao J, et al. Clin Infect Dis. 2020; 71: 2027-34.
背景
方法
SARS-CoV-2 に感染した 173 例の患者が登録された。入院中に採取した血液検体(n = 535)を用いて、SARS-CoV-2 に対する総抗体(Ab)、IgM、IgG の検査を行った。抗体の時系列による推移を解析した。
結果
173例のうち,Ab,IgM,IgGの陽転化率はそれぞれ93.1%,82.7%,64.7%であった.12例で抗体が陰性のままであった理由は、発症後後期の採血が出来なかったことが原因と考えられる。Ab、IgM、IgGの陽転するまでの日数の中央値は、それぞれ11日目、12日目、4日目であった。抗体陽性率は、発症1週間以内では40%未満であったが、発症後15日目までに100.0%(Ab)、94.3%(IgM)、79.8%(IgG)と急速に上昇した。一方、RNA検出率(PCR検査)は、発症7日目までに採取した検体で66.7%(58/87例)であったが、15−39日目には45.5%(25/55例)に低下した。PCR検査と抗体検出を組み合わせることで、発症から1週間の初期段階でCOVID-19診断の感度が有意に向上した(P<0.001)。さらに、Abの力価が高いほど、臨床経過の重症化と関連していた(P = 0.006)。
結論
IgGが陽転化しない例があったのは、発症後時間が経過してから検査できなかった患者がいるためということです。本当にIgGが陽転化しない例がどれくらいなのかはわかりませんが、診断精度を上げるには、IgMとの組み合わせで確認するのが良さそうです。
発症後日数
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抗体(IgG+IgM)
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IgG
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PCR+抗体
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1-7
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66.7%
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38.3%
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28.7%
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19.1%
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78.7%
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8-14
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54.0%
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89.6%
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73.3%
|
54.1%
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97.0%
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15-39
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45.5%
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100%
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94.3%
|
79.8%
|
100%
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計
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67.1%
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93.1%
|
82.7%
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64.7%
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99.4%
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各検査の感度。PCRは発症早期(1−7日目)の感度が高く、次第に低下してゆきます。
抗体は、IgM, IgGとも、発症1週間以内の感度は低いが8日目以降は、組み合わせることで感度が上昇することが分かります。