小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

アフガン難民の子供の感染症チェックしてくださいって言われたら…

 アフガニスタンから出国したスタッフが日本に到着されました。アフガニスタン人の殆どは、現地でずっと過ごしてきているので、感染症のチェックは重要になります。日本では非常に珍しい感染症の場合、診断も難しいと思います。

 

www3.nhk.or.jp

 
 もし、「アフガニスタンから到着した子供の感染症チェックをお願いします!」という(群馬では)ほぼありえないコンサルトを受けたときにチェックする項目をまとめました。Redbookの記載に準拠しましたので、日本でできる検査と少し異なります。
 
国際間養子・難民・移民の到着時の感染症スクリーニングについて
 
 ・A型肝炎IgM抗体、IgG抗体を考慮する
 ・養子を受け入れる家族は2週間以上前にA型肝炎ワクチンを接種しておくのが理想的
 
 ・HBs抗原必須
 ・HBs抗体とHBc抗体を同時に確認する専門家もいる
 ・HBs抗原が陽性の場合、急性感染か慢性感染かを区別する。IgM-anti-HBc陰性か6ヶ月以上HBs抗原陽性なら、慢性HBV感染を示唆
 
 ・有病率の高い国から来ているかなど、リスク因子を考慮する
 ・すべての国際間養子はHCVの検査を推奨
 ・難民と移民は、リスク因子に応じて対応する
 ・スクリーニングする場合には、18ヶ月以上ならHCV抗体を行い、陽性ならHCV-RNAを確認。18ヶ月未満では、定量RNA検査。
 ・リスク因子とは、母親がHCV陽性、外科手術歴、輸血歴、大きな歯科手術、静注薬物使用、入れ墨、性的活動・虐待、女性割礼、伝統的な皮膚切開などである。
 
腸管病原体
 ・寄生虫虫卵・虫体検査(便1−3回)
 ・GiardiaとCryptosporidiumの抗体検査
 ・アルベンダゾールによる治療を行ってしまう専門家もいる
 ・一般細菌については、検査は必要ないが、到着後に血性下痢を発症した場合には、サルモネラ赤痢、キャンピロバクター大腸菌O157などを検索する。
 
好酸球増多症
 ・血算を確認する
 ・便の虫卵・虫体検査が陰性で、好酸球増多症を認める場合、組織寄生虫症を考える
 ・トキソカラ(犬回虫)、線虫症、住血吸虫症、リンパ性フィラリアの血清診断を考慮
 
梅毒
 ・トレポネーマ試験と非トレポネーマ試験を実施する
 ・どちらかが陽性の場合、梅毒と確定できない。鑑別として、風土病性梅毒、ピンタ(pinta)、イチゴ腫(yaws)を考える。
 
 ・全例に、胸部レントゲン撮影を行う
 ・2−14歳では、ツベルクリン反応またはIGRAを実施する
 ・2歳未満ではリスク因子に応じてスクリーニングを検討する
 
 ・すべての国際間養子に対して、HIVのスクリーニングを行うべき
 ・難民や移民では、必要とされていないが、結核と診断されている場合には、HIVのスクリーニングが推奨。
 
 ・南米のシャーガス病が流行している地域から来た小児、またはそれらの国で輸血を受けたことがある小児は、Trypanosoma cruziの検査を考慮する。血清検査は12ヶ月以上の小児が対象。
 
麻しん
 ・既往歴があるか、ワクチン接種歴があるかを明確にする。
 ・既往歴・接種記録がはっきりしない場合、禁忌がなければ2回ワクチンを追加。
 
 
ということで、アフガニスタンからの難民の方の感染症チェックをする場合、私ならこのようなスクリーニングを提案するかと考えます。
・血算(好酸球)・一般的な生化学検査
A型肝炎IgM、IgG
・HBs抗原
HCV抗体(年齢とリスク次第)
・トレポネーマ試験(TPHA)、非トレポネーマ試験(RPR)
HIVスクリーニング
・胸部レントゲン、年齢によりツ反かIGRA
・便の虫卵・虫体検査(1−3回)
Giardia抗体検査とCryptosporidium(日本では集オーシストして染色)
・麻疹の既往歴・ワクチン歴確認(IgG抗体も出すかな)
・(入国時にされていると思いますが)SARS-CoV-2 PCR