小児の心臓血管外科術後に最も起きてほしくない合併症の一つが縦隔炎です。診断が難しい(表層の感染と違い創部の変化があまり無い)、治療が難しい(再手術と長期間の静注抗菌薬投与が必要)点が特に問題です。
診断感度は造影CTが良いのですが、被爆の問題もあり、小児では検査の敷居が高くなります。今回は、小児の心臓血管外科術後の合併症をエコーで診断できないかという研究です。埼玉小児医療センターからの報告です。
Ultrasound evaluation of complications after cardiovascular surgery in pediatric patients: A case series
Hosokawa T ,et al. Med Ultrason. 2020;22:108.
6例のケースが紹介されています
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5ヶ月男児。術後1ヶ月で合併症のないケース。
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5歳男児。術後1年半で、創部が発赤し、疼痛が出現した。エコーで液体貯留を確認し、穿刺したところ血腫の診断。
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生後1ヶ月男児。術後10日目で、超音波で液体貯留。CTでring-enhancementあり。穿刺したところ、血腫の診断。
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生後1ヶ月女児。術後20日目で、発熱あり、超音波で胸骨前面の高エコー域と胸骨背面の液体貯留。胸骨周囲感染。
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4歳女児。術後3年9ヶ月で、創部の発赤と疼痛。超音波で創部に液体貯留。切開排膿実施。
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1歳男児。術後10日目で、発熱。胸骨背面に液体貯留。CTで縦隔炎の診断。
縦隔炎の画像
縦隔炎の症例は1例のみですが、胸骨が十分に骨化していない年齢では、縦隔炎による胸骨背面の液体貯留を超音波で捉えられることがあることが分かります。胸骨周囲の感染や血腫が判明した例もありました。胸骨の離開も縦隔炎の参考になるという、論文もあり、この所見も超音波で確認できる。しかし、術後時間が経っていない症例では、縦隔炎と術後の非特異的な液体貯留・血腫との区別が難しいのが問題です。