虫垂炎穿孔による腹膜炎は、適切な抗菌薬投与と迅速な手術・ドレナージ(最近は保存的に頑張ることも多いが)が必要な病態です。抗菌薬に関しては、広域抗菌薬が選択されやすいですが、緑膿菌までカバーが必要かを検討した研究です。
要点
・ただし本研究では、カテコラミンを必要とするショックや免疫不全状態の患者は除外されている。
Comparative Effectiveness of Ceftriaxone plus Metronidazole versus Anti-Pseudomonal Antibiotics for Perforated Appendicitis in Children
Hamdy RF, et al. Surg Infect (Larchmt). 2019;20:399.
背景:
虫垂炎は小児外科で最も一般的な緊急手術であり、入院中の小児において抗菌薬が使用される最も一般的な疾患の1つである。抗菌薬の選択は小児医療施設によって大きく異なり、穿孔性虫垂炎に対する最適なレジメンは不明である。
方法:
我々は、第三次医療施設であるフィラデルフィア小児病院において、穿孔性虫垂炎の初期抗菌薬レジメンを比較する後方視的コホート研究を行った。2011年1月から2015年3月までの間に穿孔性虫垂炎に対して外科手術を受けた小児患者をICD-9コードで同定し、カルテで確認した。診断の48時間以上前から入院していた患者、虫垂炎の既往歴がある患者、カテコラミンを投与された患者、免疫不全者、または診断後2日以内にセフトリアキソン+メトロニダゾール(CTX/MTZ)以外の抗菌薬レジメン、または抗緑膿菌薬(セフェピム、ピペラシリン/タゾバクタム、シプロフロキサシン、イミペネム、メロペネム)を投与されていた患者は除外した。主要アウトカムは、術後合併症の頻度(退院後6週間以内の創部感染または膿瘍である。
結果:
対象となった353例のうち、252例(71%)にCTX/MTZが投与され、その他の例には抗緑膿菌薬が投与された。術後合併症はCTX/MTZ群で37例(14.7%)、抗緑膿菌薬群で18例(17.8%)に発生した。抗菌薬関連の合併症は、CTX/MTZ群では4.4%、抗緑膿菌薬群では6.9%に発生した(p=0.32)。多変量ロジスティック回帰モデルで、性別、年齢、人種、発症前の症状の持続期間を調整したところ、抗緑膿菌薬投与群の術後合併症の調整オッズ比は1.25(95%信頼区間0.66-2.40)であった。
結論:
CTX/MTZとより広いスペクトルのレジメン(抗緑膿菌薬群)では、術後合併症の発生率に差はなかった。
抗菌薬
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合併症あり
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Odds比
(95% CI)
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p値
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CTX/MTZ
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37/252例 (14.7%)
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[Ref]
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抗緑膿菌薬
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18/101例
(17.8%)
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1.26
(0.7-2.3)
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0.46
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CTX/MTZと比較された抗緑膿菌薬群の処方は、
シプロフロキサシン+メトロニダゾールが68例
ピペラシリン/タゾバクタムが36例
でした。
外科医による抗菌薬選択もまちまちで
結論としては、カテコラミンを使用するようなショック、免疫不全が無ければ、虫垂炎がたとえ先行していても、セフトリアキソン+メトロニダゾールで十分と考えられる。