何度か紹介している「虫垂炎には手術 or 抗菌薬」問題です。本日は、穿孔性虫垂炎を含む合併症ありの虫垂炎(complicated acute appendicitis)です。この2019年の論文は、システマチックレビューを行い、両者を比較したものです。
要点
・穿孔による腹膜炎を起こしている場合(free perforation appendicitis)
外科的治療の方が、合併症発症率も再入院率も低い
外科的治療の方が、合併症発症率も再入院率も低い
・保存的治療が奏効する確率は9割。再発は15%と比較的高率。
Early appendectomy vs. conservative management in complicated acute appendicitis in children: A meta-analysis
J Pediatr Surg . 2019 Nov;54(11):2234-2241.
背景
小児の合併症を伴う急性虫垂炎(Complicated acute appendicitis: CAA)に対する最適な治療法について、外科医の間でコンセンサスは得られていない。また、既存の研究では、穿孔性虫垂炎を、虫垂膿瘍や蜂窩織炎性虫垂炎と区別して解析した研究はほとんどない。
方法
本システマティックレビューおよびメタ解析の対象となる研究は、小児CAAにおいて保存的治療(non-operative management: NOM)と外科的治療(operative management: OM)を比較したものである。サブグループ解析として、CAA患者、虫垂膿瘍と蜂窩織炎性虫垂炎(AAb/AP)患者ににおいても比較を行った。
結果
14の研究が組入れ基準を満たした。メタ解析には、合計1288人の患者が含まれた。AAb/AP群ではNOMを選択した患者(RR = 0.07, 95%CI = 0.02-0.27)、FPA群ではOMを選択した患者(RR = 1.86, 95%CI = 1.20-2.87) で、合併症発生率が有意に低かった。再入院率は、NOM群に有利であった(RR = 0.07, 95%CI = 1.20-2.87)。 AAb/AP群では初回NOMを選択(RR = 0.35, 95%CI = 0.13-0.93 )、FPA群ではOMを選択(RR = 1.49, 95%CI = 1.49-7.44 )した場合に、再入院率は有意に低かった。医療費は、NOMとOMの間に有意差はなかった。入院期間は、OMが短かかった。NOMの成功率は90%、虫垂炎の再発率は15.4%であった。
結論
AAb/APの小児では、NOMで治療した方が合併症率・再入院率ともに良好であった。一方、FPA の小児では、OM で治療した方が合併症率・再入院率ともに低いことが示された。
再入院率も同じ傾向。
保存的治療が奏効する確率は概ね90%くらい。