小児の血液培養はルーチンで嫌気ボトルも採取するべき?
血液培養には、好気ボトルと嫌気ボトルがあります。小児では、理論的には嫌気ボトルでしか発育しない「偏性嫌気性菌」による菌血症は少ないので、ルーチンに嫌気ボトルに採取する必要はないと考えられています。嫌気ボトルの使用は、腹腔内感染症(穿孔性虫垂炎とか)などでは推奨されています。
しかし、実臨床では、好気でも嫌気でも発育するはずの黄色ブドウ球菌や大腸菌が、「嫌気ボトルにしか生えない」ということはしばしばあり、個人的にはルーチンで両方のボトルを使用しています。(今はNICUで勤務することはないので、体重が一応十分にある患者さんに対してです。)
本日の論文は、ロサンゼルス小児病院の救急科で実施した血液培養の研究です。強制的に、好気ボトルと嫌気ボトル各1本に血液培養を採取することにしたところ、下記の結果になりました。
・8,978本のボトル(好気・嫌気)のうち、7.1%が陽性。
・好気ボトルの陽性率は7.6%。嫌気ボトルの陽性率は6.6%。
・嫌気ボトルにしか発育しない偏性嫌気性菌は、2本(0.6%)のみ。
・好気・嫌気の両方が陽性になったのは211例(50.0%)。
好気のみ陽性は、126例(30.0%)、嫌気のみ陽性は、84例(20.0%)。
→ルーチンで好気・嫌気ボトル両方を使用したほうが良い可能性がある。
(菌血症の約2割を見落とす可能性がある!)
はじめに:
学校閉鎖は新型コロナ流行にあまり影響を与えない
Association of the Timing of School Closings and Behavioral Changes With the Evolution of the Coronavirus Disease 2019 Pandemic in the US
これからの世界を考えるヒント
本日の、ネタは、論文でも、エビデンスでもなく、最近読んだ中で、非常に感銘を受けた本の紹介です。実は、しばらく自宅の本の量を増やしたくなくて、Kindleで読むことが多かったのですが、電子書籍は
・読んだのに、なんとなく頭に残らない
・眼が悪くなる
などの、理由で最近は紙の本に完全に回帰しました。
その御蔭で、読書の面白さに再度目覚めました。やはり時代を経て残ってきたものだけあり、紙の本にまさるものは無いと思います。(論文はペーパーレスで読んでいますが…)
COVID-19パンデミックを経験し、これからの世界がどうなるのか、不安な気持ちでいっぱいです。ワクチンが一筋の光明となっています。しかし、これからの世界が、pre-コロナとおなじになるとは思えません。リモートワークが当たり前になり、学会もオンラインになり、人と人のつながりはこれまでと同様には成り立ちません。
また、新自由主義に基づく資本主義も、いろんな視点から見直しが必要になるかもしれません。
最近、自分が読んだ中で、特に印象に残る本のご紹介です。
1. 人新世の「資本論」 斎藤幸平
NHKの「100分で名著」の2021年1月分の放送で、「資本論」の解説を聞いて、初めて著者を知りました。著者が33歳と知って、驚きしかありませんでした…。
カール・マルクスが「資本論」を発表以降、彼の思想は、より進歩していたこと。彼の遺した手紙などすべてを統合しようとするMEGAプロジェクトから浮かび上がる、カール・マルクスの目指した世界はどのようなものか?
資本論というと、ソビエトなど社会主義思想を語る本と思っていたが、全然違いました。アメリカ型の新自由主義のもとで、多くの人々は貧しくなり、コモン(水などの共有財産)は少なり、気候変動は人類の生活を脅かしている。
これからの人類のあり方を考えさせる本でした。本当にすごい本!
2. たちどまって考える ヤマザキマリ
パンデミックによるとてつもない不安にさらされた時、不安を受け止め、自分で考えることの大切さを認識させてくれる本です。そして、そんな時こそ、立ち止まって深呼吸して考えることの重要性も。イタリアの家族のことや、豊かな歴史的な知識から、我々の弱さを教えてくれるいい本でした。
3. 劣化するオッサン社会の処方箋
なぜ一流は三流に牛耳られるのか 山口周
かつてのように、年長者が「年長者であるというだけで偉い」時代は終わった。時代が変わる中で、変化についていけないオッサンが、企業(集団)や若者をダメにしているのが日本。いくつになっても「学び続けなければいけない」。これを諦めた時に、自分は「老害」になってしまう。
森元首相の、しょうもない発言が出る直前に読んでいたので、この発言は個人の問題ではなく、この国のオッサンの劣化・病理を象徴していると感じたのでした。
4. ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治
ベストセラーですが、少年院で非行少年の矯正教育に取り組んだ作者の著書。そもそも、発達障害などで、自分の行為を反省させようにも「反省以前の段階」の子どもたちがたくさんいること。そのため、矯正教育が、彼らの矯正に全く役立たない。いわゆる「境界知能」「軽度発達障害」で、生きづらさを抱える人達を社会はどのように支援するか、考えさせられる本です。
5. 子どもと本 松岡享子
子供への愛、絵本への愛が溢れた、とても心が温かくなるなる本です。親が子供に、本を読んであげることで、子供の世界が広がってゆく。
子ども図書館での長い経験を通して、子供にとって本が持つ可能性を教えてくれます。
小児肺炎、誰が血培陽性になるのか??
Predictors of Bacteremia in Children Hospitalized With Community-Acquired Pneumonia
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血培陽性
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血培陰性
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p値
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WBC中央値(/μL)
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17,500
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12,400
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<.01
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CRP (mg/dL)
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23.5
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8.0
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<.01
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明らかな肺炎像
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89.8%
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65.9%
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<.01
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胸水貯留
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38.8%
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23.0%
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<.01
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ROCカーブを描くと、WBCより、CRPの方がより予測因子として使えそうですが、CRPを測定した症例が少ないので、今回は採用しなかったようです。
多変量解析を行ったところ、菌血症を予測する因子としては、