入院を要する小児の市中肺炎では、血液培養を採取することが比較的多いです。ガイドラインでも推奨されていますが、実際に陽性になることは極めてまれです。それは、肺炎球菌ワクチンなどが普及し、肺炎球菌肺炎から菌血症を併発する症例が減ったことと関係あります。
では、日本や米国のように医療環境が整い、ワクチン接種率も高い状況では、市中肺炎の小児で「入院時のルーチンの血培が必要か?」を再考する必要があります。
2017年に発表された、結構有名な論文です。
要点
・CAPで入院した小児7509名の34%で血培を採取した。
・うち、血培陽性になったのは、2.5%のみ。
・血培の結果、治療方針が変わる可能性がある(ペニシリン感受性でなかったので変更が必要になる)のは、0.15%のみ。
→血液培養が臨床的な判断を変える可能性は極めて低い
Utility of Blood Culture Among Children Hospitalized With Community-Acquired Pneumonia
Pediatrics. 2017 Sep;140(3):e20171013.
背景と目的:
米国のガイドラインでは、小児の中等症または重症の市中肺炎(CAP)では、入院時に血液培養を行うことを推奨している。我々は、CAPで入院した児の菌血症の有病率を明らかにし、微生物学的特徴とペニシリン感受性のパターンを明らかにすることを目的とした。
方法:
2007年から2011年までに6つの小児病院にCAPで入院した小児を対象に横断研究を行った。以前に検証されたアルゴリズムを用いて退院診断コードでCAPと病名が付けられた生後3ヵ月から18歳までの小児を対象とした。複雑な基礎疾患を持つ児は除外した。細菌培養検査の結果もとに、血液培養で検出された菌を真の病原体または汚染菌として分類した。抗菌薬感受性はすべての病原体について評価した。
結果:
5年間の研究期間中にCAPで入院した小児7509人が対象となった。34%の症例で血液培養を行った。65例(血液培養を行った患者の2.5%;95%信頼区間[CI]:2.0%-3.2%)から真の病原体が検出された。検出された病原体の内、肺炎球菌が78%を占めた。検出された病原体のうち、50例(82%)はペニシリン感受性であった。11例からペニシリン耐性の病原体が検出された。血液培養を採取した症例の0.43%(95%CI:0.23%-0.77%)、CAPで入院した全症例の0.15%(95%CI:0.08%-0.26%)であった。
結論:
血液培養から検出された菌(65例)は、肺炎球菌78.5%で、黄色ブドウ球菌7.7%、インフルエンザ桿菌4.6%、β溶血性連射球菌3.1%、A群レンサ球菌3.1%でした。
重症例ほど、血液培養が陽性になりやすい傾向があります。
血液培養はそれなりにコストが掛かる検査です。これまでの感染症診療は、血液培養の件数が少ないから「どんどん血培を採りましょう」でしたが、今後はもっと賢く「それなりに事前確率がある時に採りましょう」となってゆく気がします。