本日の、ネタは、論文でも、エビデンスでもなく、最近読んだ中で、非常に感銘を受けた本の紹介です。実は、しばらく自宅の本の量を増やしたくなくて、Kindleで読むことが多かったのですが、電子書籍は
・読んだのに、なんとなく頭に残らない
・眼が悪くなる
などの、理由で最近は紙の本に完全に回帰しました。
その御蔭で、読書の面白さに再度目覚めました。やはり時代を経て残ってきたものだけあり、紙の本にまさるものは無いと思います。(論文はペーパーレスで読んでいますが…)
COVID-19パンデミックを経験し、これからの世界がどうなるのか、不安な気持ちでいっぱいです。ワクチンが一筋の光明となっています。しかし、これからの世界が、pre-コロナとおなじになるとは思えません。リモートワークが当たり前になり、学会もオンラインになり、人と人のつながりはこれまでと同様には成り立ちません。
また、新自由主義に基づく資本主義も、いろんな視点から見直しが必要になるかもしれません。
最近、自分が読んだ中で、特に印象に残る本のご紹介です。
1. 人新世の「資本論」 斎藤幸平
NHKの「100分で名著」の2021年1月分の放送で、「資本論」の解説を聞いて、初めて著者を知りました。著者が33歳と知って、驚きしかありませんでした…。
カール・マルクスが「資本論」を発表以降、彼の思想は、より進歩していたこと。彼の遺した手紙などすべてを統合しようとするMEGAプロジェクトから浮かび上がる、カール・マルクスの目指した世界はどのようなものか?
資本論というと、ソビエトなど社会主義思想を語る本と思っていたが、全然違いました。アメリカ型の新自由主義のもとで、多くの人々は貧しくなり、コモン(水などの共有財産)は少なり、気候変動は人類の生活を脅かしている。
これからの人類のあり方を考えさせる本でした。本当にすごい本!
2. たちどまって考える ヤマザキマリ
パンデミックによるとてつもない不安にさらされた時、不安を受け止め、自分で考えることの大切さを認識させてくれる本です。そして、そんな時こそ、立ち止まって深呼吸して考えることの重要性も。イタリアの家族のことや、豊かな歴史的な知識から、我々の弱さを教えてくれるいい本でした。
3. 劣化するオッサン社会の処方箋
なぜ一流は三流に牛耳られるのか 山口周
かつてのように、年長者が「年長者であるというだけで偉い」時代は終わった。時代が変わる中で、変化についていけないオッサンが、企業(集団)や若者をダメにしているのが日本。いくつになっても「学び続けなければいけない」。これを諦めた時に、自分は「老害」になってしまう。
森元首相の、しょうもない発言が出る直前に読んでいたので、この発言は個人の問題ではなく、この国のオッサンの劣化・病理を象徴していると感じたのでした。
4. ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治
ベストセラーですが、少年院で非行少年の矯正教育に取り組んだ作者の著書。そもそも、発達障害などで、自分の行為を反省させようにも「反省以前の段階」の子どもたちがたくさんいること。そのため、矯正教育が、彼らの矯正に全く役立たない。いわゆる「境界知能」「軽度発達障害」で、生きづらさを抱える人達を社会はどのように支援するか、考えさせられる本です。
5. 子どもと本 松岡享子
子供への愛、絵本への愛が溢れた、とても心が温かくなるなる本です。親が子供に、本を読んであげることで、子供の世界が広がってゆく。
子ども図書館での長い経験を通して、子供にとって本が持つ可能性を教えてくれます。