先ほど紹介した論文(小児の市中肺炎で血培陽性は2.5% - 小児感染症科医のお勉強ノート)の二次解析のデータです。
小児の市中肺炎では、血培陽性率がかなり低い(2.5%)ですが、どのような患者が血培陽性になる確率が高いか、同じデータを用いて解析しました。
要点
・末梢血WBC 2万以上は菌血症の可能性が高くなる
・レントゲンで明確な肺炎像があると菌血症の可能性が高くなる
・CRP高値も(解析はしていないが)菌血症の可能性が高いかも
・非ICUでは、小児の市中肺炎に血液培養を採取するべきではない(著者の意見)
Predictors of Bacteremia in Children Hospitalized With Community-Acquired Pneumonia
Hosp Pediatr. 2019 Oct;9(10):770-778.
背景と目的:
市中肺炎(CAP)で入院した小児の血液培養陽性率は低い。菌血症のリスクが高い小児の特徴はほとんど分かっていない。
方法:
2007年から2011年までに米国の小児病院6施設にCAPで入院した生後3ヵ月から18歳までの小児を対象とした後方視的コホート研究の二次解析を行った。複雑な基礎疾患を持つ小児および入院時に血液培養を行っていない小児は除外した。菌血症の予測因子を特定するために、臨床症状、臨床検査、微生物学的データ、画像データを評価した。
結果:
CAPで入院した7509例の小児例のうち、2568人(34.2%)が入院初日に血液培養を採取された。年齢中央値は3歳であった。血液培養を行った65例が血液培養陽性(2.5%)であった。11例(0.4%)にはペニシリン非感受性の病原体が検出された。菌血症の可能性が高いのは、白血球数が20,000/μL以上(5.4%;95%信頼区間3.5%-8.1%)およびレントゲンで明らかな肺炎像あり(3.3%;95%信頼区間2.4%-4.4%)であった。ペニシリン非感受性菌が検出されれるのは、個々の予測因子が存在しても1%未満であった。ICU以外に入院した小児では、血液培養がコンタミネーションとなる確率が、ペニシリン非感受性菌が検出される確率を上回っていた。
結論:
白血球増多または画像上明らかな肺炎像がある小児例では、菌血症の可能性が少し高いが、その割合は依然として低く、ペニシリン非感受性菌は、これらの予測因子があったとしてもまれである。CAPの小児がICU以外に入院する場合には、血液培養を行うべきではない。(Blood cultures should not be obtained in children hospitalized with CAP in a non-ICU setting.)
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血培陽性
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血培陰性
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p値
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WBC中央値(/μL)
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17,500
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12,400
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<.01
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CRP (mg/dL)
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23.5
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8.0
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<.01
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明らかな肺炎像
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89.8%
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65.9%
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<.01
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胸水貯留
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38.8%
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23.0%
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<.01
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ROCカーブを描くと、WBCより、CRPの方がより予測因子として使えそうですが、CRPを測定した症例が少ないので、今回は採用しなかったようです。
多変量解析を行ったところ、菌血症を予測する因子としては、末梢血白血球数 20,000/μL以上 aOR 3.2 (95% CI, 2.0-5.2)
レントゲンで明確な肺炎像 aOR 4.8 (95% CI, 2.1-10.9)