小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

漏斗胸Nuss法術後の感染症について

Obermeyer RJ, et al. J Pediatric Surgery. 2016;51:154.
Risk factors and management of Nuss bar infection in 1717 patients over 25 years.
 
Nuss法は、漏斗胸の治療法として確立しています。
漏斗胸に1本または2本の金属のバーを通して、半ば強制的に胸郭の変形を矯正する手術です。
清潔手術であり、感染率は低いのですが、一度人工物に感染すると、治療が難しくなります。
また、手術部位感染(SSI)と鑑別が難しい病態が2つあり、SSIの診断をつけるのも意外と難しいです。一つは、金属アレルギーで、術後創部の発赤などから気づかれることがあります。もう一つは、胸膜炎(胸水貯留)で、胸膜を切開することによる炎症や、胸腔の形を矯正することで胸腔内が強い陰圧になり、胸水貯留が起こるようです。
本研究は、1717例の単施設の後方視的研究です。43例(2.5%)が術後感染症を発症しました。発症は術後33.5日(中央値)。症状は、発赤(73%)、浸出液(70%)、腫脹(43%)、疼痛(43%)、発熱(33%)などでした。蜂窩織炎では、100%バーを温存でき、治療期間は平均34日間でした。最初は点滴で、落ち着いたら内服へ移行しているようです。深部SSI(バー感染)では、点滴での治療期間の平均は24日間と長く、総治療期間の平均は120日でした。25%の症例でバーを抜去しています。
 
SSIのリスクは、周術期にクリンダマイシンを使用(セファゾリンのほうがSSI少ない)、創部周囲に(鎮痛用の)皮下カテーテルの留置が挙げられました。また、72時間を超える周術期抗菌薬の投与で、SSIは減らず、周術期抗菌薬の投与期間はもっと短くて良いと考えられました。
 
Nuss法術後SSIの研究の中で、本研究が最も症例数が多く、現状では最も情報量が多い論文だと思います。
 

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