小児の心臓外科術後の炎症反応上昇は、アプローチが難しく、いつも苦戦します。理由としては、侵襲が大きくCRPが上昇しやすい、医療関連デバイスが多い(気管内挿管、中心静脈カテーテル、腹膜透析カテーテル、尿道カテーテル、Aライン等)、身体所見が取りにくい(もともと低年齢、さらに鎮静、筋弛緩の影響)、薬剤(特にステロイド)の影響などが挙げられます。
これは、おそらく他の外科領域の術後感染症と同じ傾向と思いますが、発生時期について、分析しているのがとても参考になります。
菌血症は比較的術後早期に起き、SSIはある程度時間が経過してから発症することが多いです。
Invasive Bacterial and Fungal Infections After Pediatric Cardiac Surgery: A Single-center Experience
Pediatr Infect Dis J. 2021 Apr 1;40(4):310-316.
背景
心臓外科手術後に炎症を呈する小児において、感染症と非感染性合併症の鑑別は困難である。心臓外科手術後の感染症の発症率は低いことを考えると,抗生物質を過剰に使用する可能性がある。我々は、当院における心臓外科手術後の小児の侵襲性細菌・真菌感染症の発生率を調べ、術後管理を評価するために本研究を行った。
方法
本研究は、単一施設の後方視的観察研究である。2012年1月から2015年12月までに当施設で心臓手術を受けた16歳以下の小児を対象とした。
結果
395件の心臓外科手術を分析した。35回の術後の侵襲性細菌・真菌感染症を、29件の手術で認めた(7%、入院100日あたり0.42)。細菌感染症のうち、最も多かった感染巣は、菌血症と肺炎で、それぞれ37%(13/35)、23%(8/35)であった。術後感染症の発生率は,手術の複雑性スコア(STAT mortality category)や術後の小児集中治療室(PICU)の滞在期間と関連していた。微生物が確定した感染症を発症しなかった357例のうち154例(43%)では、術後の抗生物質投与が3日以上継続され、80例(22%)では5日以上継続された。
結論
当院における術後の細菌・真菌感染症の発生率は、これまでの文献と同程度であった。手術の複雑性スコアが高く、PICU滞在期間が長いことは、リスク因子であった。