小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

「生後60日以内の比較的元気な発熱の児において、尿検査異常なし+末梢血WBC<4090+プロカルシトニン<1.71を満たす時、重症感染症を検出する感度は97.7%、特異度60.0%。陰性適中率は99.6%になる」

A Clinical Prediction Rule to Identify Febrile Infants 60 Days and Younger at Low Risk for Serious Bacterial Infections.

Kuppermann N, et al.JAMA Pediatr. 2019 Feb 18. doi: 10.1001/jamapediatrics.2018.5501. [Epub ahead of print]
 
 米国のカリフォルニア大学からの報告です。米国の24の救急施設から生後60日以内の発熱の症例を集めて前方視的に検討しました。明らかに重症そう、48時間以内の抗菌薬投与歴、未熟児、基礎疾患有り、体内に人工物留置有り、軟部組織感染症がある症例は除外した。(つまり、特に既往のない、それほど悪そうではない60日未満の小児が対象)
 救急外来で検査する項目の中で、重症細菌感染症を検出できる項目を検討した。
1821例の患者のうち、重症感染症は、170名(9.3%)であった。尿路感染、菌血症が多かった。細菌性髄膜炎は、10例のみであった。
 「尿検査異常なし+末梢血WBC<4090+プロカルシトニン<1.71」の3項目を満たす時、低リスクと判断する。重症感染症を検出する感度は97.7%、特異度60.0%。陰性適中率は99.6%になる。3例の重症感染症を見逃した。Enterobecater菌血症1例と尿路感染症2例であった。
 これをもう少し簡単にした基準「尿検査異常なし+末梢血WBC<4000+プロカルシトニン<0.5」 を用いでも感度は変わらず、特異性は少し低下する。有用性は一緒で、こちらの方が使いやすいかも。
 
 乳児早期の発熱では、(特に夜間に)髄液検査までしようかと悩んでしまいます。いくつか乳児早期の発熱から重症例を予測する因子があり、Rochesterクライテリアは非常に古くかつ便Gram染色でWBCを見る、その他は髄液検査が必要になっています。今回のクライテリアは、髄液検査以外でほぼすべての重症感染症を除外できるのは魅力的です。しかし、この検討は明らかな重症例が含まれないこと、おそらく日本では発熱後すぐに受診する人が多く、PCTなどの炎症マーカーが変動する前に検査を行い、重症例を軽症と判断してしまう可能性があり、注意が必要と考えます。