細菌性髄膜炎は、小児において、非常に重篤な病気ですが、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの導入により、とても少なくなりました。特に日本は髄膜炎菌による重症感染症が少ないので、小児科臨床で髄膜炎菌に出会うことはかなり稀です。ということで、小児科専門医になるまでに一度も髄膜炎を見たこと無いというケースもあります。
要点
・MenBワクチンによりMenB髄膜炎は減った。
・MenC髄膜炎は、ワクチン無しで、勝手に減っている。
・肺炎球菌ワクチンをPCV7→PCV13に変えたら、肺炎球菌髄膜炎も減った。(ワクチン接種率の上昇も要因かも)
・その後、リバウンドした。
・Hib髄膜炎は、ワクチン回数を1回減らし、種類を変えたら、増えてしまった。
・MenBワクチンによりMenB髄膜炎は減った。
・MenC髄膜炎は、ワクチン無しで、勝手に減っている。
・肺炎球菌ワクチンをPCV7→PCV13に変えたら、肺炎球菌髄膜炎も減った。(ワクチン接種率の上昇も要因かも)
・その後、リバウンドした。
・Hib髄膜炎は、ワクチン回数を1回減らし、種類を変えたら、増えてしまった。
Vaccine-preventable Pediatric Acute Bacterial Meningitis in France: A Time Series Analysis of a 19-Year Prospective National Surveillance Network.
Pediatr Infect Dis J. 2024 Jan 1;43(1):74-83.
背景
フランスでは、Hibワクチン、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)、および髄膜炎菌血清群C(MenC)ワクチン接種が実施されてきた。これらの介入は接種率などが異なるため、ワクチンで予防可能な急性細菌性髄膜炎(ABM)の疫学を混乱させている。
方法
フランスのプロスペクティブサーベイランスネットワークのデータを解析した(推定全国カバー率:61%)。259の小児科入院施設で登録された15歳以下の小児のABMを対象とした。2001年から2020年まで、ワクチンの効果を推定した。
結果
髄膜炎菌(35.0%)、肺炎球菌(29.8%)、Hib(3.7%)による7,186例が解析対象となった。MenCワクチン接種前と接種後の傾向を比較すると、髄膜炎菌ABM全体では変化はなく、MenCによるABMは減少した(-0.12%/月、95%CI:-0.17~-0.07、P<0.001)。MenBによるABMは、ワクチン接種プログラムなしでも減少していたが(-0.43%/月、95%CI:-0.53~-0.34、P<0.001)、髄膜炎菌ABMの68.3%はMenBであった。肺炎球菌によるABMは、PCV7開始後も変化は認められなかった。PCV13へ切り替え後に有意に減少した(-0.9%/月、95%信頼区間:-1.6~-0.2%、P = 0.01)。2014年5月以降は、リバウンドが起こり(0.5%/月、95%CI:0.3~0.8%、P<0.001)、89.5%が、PCV13に含まれない血清型であった。Hib ABM発症率は2017年6月以降増加していた。
結論
フランスにおけるPCV7およびMenCワクチン導入は、ワクチン接種が遅く、接種率も低かったため、ABMを減らさなかった。しかし、PCV13への切り替えとともに、接種率が向上し、ABMは減少した。MenBと次世代PCVがフランスにおけるABM発症の大部分を予防できる可能性を示唆している。
髄膜炎菌は、順調に低下しています。
・肺炎球菌髄膜炎は、PCV7導入後、あまり減りませんでしたが、PCV13にしてから、減りました。しかし、2014年以降、非ワクチン株によるリバウンドが見られます。
・Hibに関しては2017年以降、増加しています。Late Hibワクチンということで、ワクチンの中身を変えたようですが、それ以上にワクチン回数が3+1回から、2+1回に変更された影響があるように感じます。