菊池病は、日本では日本では比較的多い病気です。発熱と頸部リンパ節腫脹が特徴的です。小児では、時々、不明熱の原因として認められます。以前、菊池病のまとめを書きましので、読んでいただけると幸いです。
菊池病は、典型的には頸部リンパ節腫脹が見られますが、頸部以外のリンパ節が腫脹することもあります。それについてまとめた台湾からの報告です。
要点
・菊池病で、両側性頸部リンパ節腫脹が見られるのは1/4程度
・胸鎖乳突筋に沿ったリンパ節が腫脹することが多い
・頸部以外のリンパ節腫脹の頻度は低くない(腋窩・縦隔・腹部・鼠径部など)
Distribution of lymphadenopathy in patients with Kikuchi disease.
J Microbiol Immunol Infect. 2021 Apr;54(2):299-304.
背景
頸部リンパ節腫脹は、菊池病(KD)の主要な症状の一つである。菊池病における頸部リンパ節以外のリンパ節病変の発生頻度や部位について、包括的な報告はない。
方法
2003年ー2016年に、病理学的にKDと確定診断され、診断時にCT/全身炎症スキャンを行った患者60名を後方視的に同定した。画像検査を確認し、罹患LNの位置、大きさ、特徴を分析した。臨床的および検査データはカルテ記録から抽出し、頸部以外のLN病変との関連性を確認した。
結果
35例(58.3%)が女性で、年齢中央値は21.3歳(3-64歳の範囲)であった。頸部の画像検査を行った59例中、42例(71.2%)に片側性、16例(27.1%)に両側性のリンパ節病変が認められた。Som分類ではレベルII、III、IVに最も多くみられた。最も大きなLNはレベルIIに最も多く認められた。腹部、骨盤、鼠径部、腋窩、縦隔の頸部外リンパ節腫脹の発生率は、それぞれ52.9%(9/17)、47.1%(8/17)、41.2%(7/17)、30.6%(11/36)、14.3%(8/56)であった。頸部リンパ節のみが腫脹している症例と比較すると、頸部以外のリンパ節病変を有する症例では、両側頸部リンパ節腫脹(P = .0379)および白血球減少(P = .0173)の発生頻度が有意に高かった。
結論
片側の頸部リンパ節腫脹は、KDのリンパ節病変の中で最も頻度の高い病型であった。頸部外リンパ節腫脹は珍しくなく、頸部リンパ節が両側性に腫脹する頻度が高く、白血球減少の頻度も高かった。
全患者 (59例)
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患者数(%)
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リンパ節の圧痛
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45 (76.3)
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両側性の腫大
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16 (27.1)
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片側性腫大
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42 (71.2)
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腫大リンパ節の位置
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レベルI
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11 (18.6)
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レベルII
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53 (89.8)
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レベルIII
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52 (88.1)
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レベルIV
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52 (88.1)
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レベルV
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40 (67.8)
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CT画像のある患者
(51例)
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患者数(%)
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最大径(cm)
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1.1-3.0 (平均1.9)
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リンパ節周囲の炎症
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50 (98.0)
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リンパ節の壊死
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32 (62.7)
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部位
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症例数
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11/36 (30.6%)
両側 8例
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縦隔
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8/56 (14.3%)
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腹腔内
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9/17 (52.9%)
傍大動脈 7例
胃周囲 2例
腹腔動脈周囲 4例
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骨盤内
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8/17 (47.1%)
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鼠径部
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7/17 (41.2%)
両側 6例
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菊池病=頸部リンパ節炎と思っていると、他の部位のリンパ節炎を見た時に、菊池病が鑑別診断に想起しにくくなるかもしれません。
「菊池病は、頸部にも他のリンパ節にも炎症を起こす病気」と覚えましょう。