小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

BCG(TOKYO-172株)の副作用(タイからの報告)

 BCGは日本でも定期接種になっているワクチンです。結核の発症(特に重症化)を防ぐ効果が高く、多くの国で実施されています。
 この論文は、タイからのBCG副作用の報告です。タイでは、BCGワクチンは生後すぐに接種し、皮内注射になります。日本とは接種時期・方法とも異なりますが、重要な副作用は同じです。写真も豊富なので、勉強になります。
 
要点
・BCGワクチンの副反応は、リンパ節炎が最多
・まれに骨炎や播種性感染症が生じる
重篤な副反応を起こした症例は、先天性免疫不全症候群の可能性がある
 
Clinical features and outcomes of Bacille Calmette-Guérin (BCG)-induced diseases following neonatal BCG Tokyo-172 strain immunization
Vaccine. 2018; 36: 4046
 
背景:出生時に接種するBCGワクチン(注:日本では5-8ヶ月での接種が推奨)によって、軽度の副反応が見られることがある。しかし、重篤な副反応もまれに報告されている。
 
目的:BCGワクチン(TOKYO-172株)(注:日本と同じもの)による副反応のうち、バンコクの小児3次医療機関に受診が必要となった症例の臨床的な特徴と予後を調査すること。
方法:我々は、2007年1月から2016年12月まで、ICD-10に基づく病名で選ばれた患者の診療録を後方視的にレビューを行った。対象は、3歳未満で、リンパ節炎・骨炎・播種性感染症を起こした患者でBCGが原因と推定されれる症例である。症例は、疑い例(臨床的にはBCG感染症に合致するが検査室で確定ができなかった症例)、強い疑い例(M. tuberculosis complexが検出されてた症例)確定例(検査室でPCRでM. bovis BCG株が同定された症例)に分類した。
 
結果:95名の小児患者が対象となった。57%(60%)は男児で、年齢中央値は、3.5ヶ月(範囲: 0.6-28.7)であった。25例(26.3%)が疑い例、49例(51.6%)が強い疑い例、21例(22.1%)が確定例であった。87例(92%)が局所のリンパ節炎、5例(5%)が骨炎、3例(3%)が播種性感染症であった。リンパ節炎のリンパ節は平均2.2cm (範囲: 0.7-5)で、53%で肺病変を認めた。5例が免疫不全症候群と診断され、内、3名は播種性BCG感染症、2名がリンパ節炎であった。8例が穿刺排膿を実施し、57例が外科的に摘出を行った。骨炎は、全例が外科的処置と抗結核薬の内服を行った。1例が、後遺症として脚長差を残した。
 
結論:局所リンパ節炎は、BCG感染症として、最も一般的である。BCG骨炎患者に、一人も先天性免疫不全症候群の患者がいなかったのは、BCGの病原性が新生児には強いのかもしれない。BCG副反応の発生頻度の把握と有効なワクチン政策の立案のためには、体系的なサーベイランスシステムの構築が必要である。
 

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 日本と注射法が異なる皮内注射ですので、注射痕の印象が異なります。

 

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 BCG骨炎や播種性感染症が、接種後6ヶ月以降にしか見られません。発症まで時間がかかるのが特徴です。
 

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 骨炎の好発部位は下肢です。この研究でも、大腿骨や脛骨に病変が見られています。他にも胸骨や肋骨にも起きます。

 

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 播種性感染症が起きた3例は全例が先天性免疫不全症候群でした。2名が重症複合免疫不全症(SCID)、1名がWiscott Aldrich症候群でした。発症時期は、6.5ヶ月、23.7ヶ月、9.5ヶ月となっています。SCIDなら、それまでに他の感染症を発症して、診断されているように思います。