小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

非結核性抗酸菌によるリンパ節炎は外科的切除が望ましい

引き続きNTMによるリンパ節炎の研究です。
現時点でNTMリンパ節炎の最も詳細なレビューだと思われます。
 
The Management of Non-Tuberculous Cervicofacial Lymphadenitis in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis
Zimmermann P, et al.  J Infect. 2015;71(1):9-18
 
目的:免疫正常な小児において、非結核性抗酸菌(NTM)による感染症で最も多いのは頭頸部リンパ節炎である。外科的切除術が標準的な治療と考えられているが、最良の治療方法に関しては定まっていない。この研究では、異なる治療方針による治療効果のエビデンスを検討した。
 
方法:文献のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。1951名の小児患者のデータを60個の論文から集めた。
 
結果:60個の研究の内、ランダム化比較試験は3本、前方視的コホート研究は4本、後方視的コホート研究は38本、症例報告15本である。
<疫学・臨床症状・微生物学
 1951例の平均年齢は3.4歳であった。部位は、下顎部・オトガイ部が最多で、ついで耳介周辺・耳下腺部であった。複数のリンパ節腫脹があったのは7%、両側リンパ節腫脹は2%のみであった。(つまり、ほとんどが片側性で1個のリンパ節が腫れているのみ。)29%の症例で皮膚の変色や瘻孔形成があった。18%で主張したリンパ節が硬結・波動を触れた。
 

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 64%の症例で、起炎菌を微生物学的に証明(培養またはPCR)できた。他の症例は、臨床症状・組織所見・ツベルクリン反応などを用いて診断された。
 578例(30%)の症例は、最初に抗菌薬を投与されて、効果がなかった。診断までの日数は1−30週間であった。1274例に関しては、起炎菌が判明しており、MAIS-complex (M. avium, M. intracellulare, M. scrofulaceum)で68%を占めた。
 

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<治療>
 外科的治療による、治癒率は88.5%(95%CI; 86.5-90.3%)であった。主な月餅性は顔面神経麻痺で、10%の症例に合併した。100例の報告では、96%の治癒率が報告されている。切開ドレナージは、治癒率は34.2% (95% CI; 28.4-40.2%)と低く、再発率も89%と高かった。瘻孔形成や美容的にも問題が多い。掻爬術は、治癒率が61.2% (95% CI; 52.3-69.5%)であった。完全切除と比較し、治癒までに時間を要する。穿刺吸引は、治癒率は37.5% (95% CI; 22.4-54.8%)であった。
 内服知慮王は、19論文、171例で報告されている。治癒率は67.8% (95% CI; 60.6-74.5%)である。RCTでもクラリスロマイシンとリファブチンを12週間以上使用した群と完全切除とを比較しているが、内服治療での治癒率は66%であった。抗菌薬による副作用で8%の症例が内服を中断した。他の報告でも、内服薬はクラリスロマイシンにリファブチン、リファンピシン、エタンブトールなどを組み合わせる事が多い。治療キアkンは1−52週間とばらつきが大きい。
 外科的治療と抗菌薬の内服を組み合わせた報告もある。
 無治療経過観察も156症例で実施されている。自然警戒は89.9%(95%CI; 84.4-93.9%)であった。無治療では、治癒まで40週間を要した。イスラエルからの92例の無治療経過観察の報告では、治癒率は71%であった。
 Linear mixed model regressionを用いて、各治療法の効果を比較した。無治療経過観察を基準として、adjusted mean cure rateは、完全切除で98%(95% CI; 97.0-99.5%)、抗菌薬で73.1%(95% CI; 49.6-88.3%)、無治療経過観察で70.4%(95% CI; 49.6-88.3%)。完全切除が有意に治癒率が高く odds ratio 33.3であった。
 

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 外科的完全切除が、治癒率としても優れる。また、病原菌の確定もできるし、結核やリンパ腫などの悪性腫瘍の除外もできる。一方で、顔面神経麻痺などの合併症には注意が必要。また、進行した状態では完全切除が難しいこともある。術前・術後の抗菌薬の追加に関しては、効果は不明。