鼠径部リンパ節炎は、小児ではかなり稀な疾患です。成人では、性感染症に関連した鼠径部リンパ節炎が多いのですが、小児には性感染症が少ないことが関連しているのだと思います。そのため、小児の鼠径部リンパ節炎の原因は、化膿性(一般細菌による)リンパ節炎が最多で、稀に、猫ひっかき病、結核などがあります。
今回、紹介する論文は都立小児医療センターで経験された17例の乳児(1歳未満)の鼠径部リンパ節炎のまとめです。
要点
・乳児の鼠径部リンパ節炎の原因は、臍(最多)、外陰部・肛門部、下肢の炎症の波及が多い。
・黄色ブドウ球菌が最多の起炎菌。
・ヘルニア嵌頓(かんとん)と誤診されるケースが多い
Acute Inguinal Bacterial Lymphadenitis in Infants Younger Than 1 Year of Age
Pediatr Infect Dis J . 2021 Nov 1;40(11):e450-e451.
乳児の鼠径部リンパ節炎の17例のまとめです。東京都立小児総合医療センターからの報告です。(17例ですが、病気のレア度を考えると、すごい症例数ですね…。)
小児において、頸部リンパ節炎は頻度が高いが、鼠径部リンパ節炎は稀である。我々の施設で、数例の臍炎を伴った鼠径部リンパ節炎の乳児例を経験したので、後方視的に乳児の鼠径部リンパ節炎の症例を検討した。
症例は、2010年から2020年に、東京都立小児総合医療センターで治療した乳児の鼠径部リンパ節炎が対象。先天性免疫不全症の可能性については、質問表に基づいて検討した。
17例が解析の対象となった。年齢中央値は56生日。3名が早産児であった。感染経路が特定できたのは12例(70.6%)。うち、8例が臍炎など臍に病変があった。3名が外陰部・肛門部に病変があった。1名が大腿部に蜂窩織炎があった。3例が両側性であった。6例は、初診時には鼠径ヘルニア嵌頓と診断されていた。12例に、穿刺培養検査が行われ、11例がメチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)であった。免疫不全について検討した症例の内、1例は、多発リンパ節炎を発症したが、特定の先天性免疫不全症は診断されなかった。
治療については以下のようになりました。程度にはよると思いますが、2週間程度の抗菌薬治療が望ましいようです。
静注抗菌薬
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13例(76.5%)
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抗菌薬治療期間
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中央値 15日
IQR 9-21日
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