川崎病(KD)は、発熱や眼球結膜充血などの特徴的な症状を呈する疾患です。頸部リンパ節腫脹を認める頻度が高く、診断基準の1項目になります。リンパ節腫脹と発熱のみしか症状がない川崎病は、化膿性リンパ節炎との鑑別が難しいことがあります。
KDと診断されれば、リンパ節腫脹があっても、生検などの病理学的な検査はしないことがほとんどなので、あまりKDのリンパ節腫脹の病理学的な検討はありません。今回は、33例の川崎病のリンパ節の病理学的変化のまとめです。
要点
・頸部LNの5/23例で、虚血性変化に起因すると考えられる壊死を認めた。
壊死を認めたLNでは、少血管内のフィブリン血栓や核の破砕を認めたが、膿瘍や肉芽腫は認めなかった。
・壊死を認めないLNでは、傍皮質帯の拡大やリンパ洞の拡張が見られた。リンパ洞には、単球やマクロファージが目立った。
・頸部LN以外のリンパ節では、壊死が認められることはまれで、非特異的な炎症性変化を認めた。
Histopathological study of lymph node lesions in the acute phase of Kawasaki disease
Y Yokouchi, et al. Histopathology. 2013;62(3):387-96.
目的:急性の川崎病(KD)における頸部LNの病理組織学的特徴を検討し、頸部外LNの変化を明らかにすることを目的とする。
方法と結果:
急性期のKD患者33名の検体を研究の対象とした。LNを頸部(n=23)とそれ以外(n=26)に分け、組織学的に検討した。頸部だけでなく、全身のLNにも組織学的変化が見られた。リンパ節腫脹の多くはリンパ洞拡大や傍皮質帯拡大による非特異的なものであるが、一部のLNでは虚血性変化に起因すると推測される大小の壊死病変も認められた。壊死病巣は被膜の直下から出現し、小血管内のフィブリン血栓や血管周囲の核の破砕を伴っていた。特に頸部LNが壊死した場合、LNの被膜や周囲の結合組織に高度の非化膿性の炎症が生じる。
結論:
壊死を伴うリンパ節腫脹に加えて、LN被膜や⁄周囲の結合組織に単球⁄マクロファージを主体とした非化膿性炎症が認められれば、KDを疑うべきである。
追加
33例中10例が、剖検例です。通常のKDよりも、重篤な冠動脈病変を合併した重症例が多いことが示唆されます。リンパ節の壊死性変化をきたした症例は頸部リンパ節の検体の5/23例でした。5例中2例は剖検例です。膿瘍形成や肉芽腫形成が見られた症例はありませんでした。
壊死が見られないリンパ節では、傍皮質帯の拡大やリンパ洞の拡張が見られた。リンパ洞には、単球やマクロファージが目立った。小血管の軽度の増殖を認めフィブリン血栓や核の破砕は認めなかった。
頸部LN以外のLNを検討した26例で、1例のみ壊死(気管分岐部のリンパ節)が見られた。他は、非特異的な変化を来たし、リンパ洞拡張と、傍皮質帯の拡大を認めた。リンパ洞内には、マクロファージが多数見られた。小血管のフィブリン血栓は認めなかった。10例でLNの周囲組織に血管炎の所見を認めた。
リンパ節に壊死が認められる(矢印)