小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

家庭内での新型コロナ二次感染率のまとめ

 新型コロナウイルスの陽性者が減り、徐々に日常を取り戻しつつあります。2022年初頭から経験した第6波は、オミクロン株が流行したもので、これまでの流行で最大の感染者数と死者数を記録しています。
 その理由に、オミクロン株の感染力の強さ、世代間時間の短さ(次の患者を生み出すまでの時間が短い)、ワクチン効果の減弱などが挙げられます。
 それぞれの変異株で、家庭内での二次感染の起こりやすさをまとめた論文です。やはりオミクロン株が家庭内での二次感染を起こす可能性が一番高いことが分かります。
 
Household Secondary Attack Rates of SARS-CoV-2 by Variant and Vaccination Status: An Updated Systematic Review and Meta-analysis 
JAMA Netw Open . 2022 Apr 1;5(4):e229317.
 
はじめに
 SARS-CoV-2の家庭内二次感染率(SAR)は、2021年6月17日までに18.9%(95%CI、16.2%−22.0%)と報告された。新たな変異株が出現し、ワクチン接種が広がったため、SARに影響を与えていると考えられる。そのため、本研究では、これまでに報告された家庭内SARがどのように変化したか、SARが変異株の種類、感染源および被接触者のワクチン接種状況によって異なるかどうかを評価した。
 
方法
 2021年6月18日から2022年3月8日までのPubMedとmedRxiv、および適格論文の参考文献リスト、プレプリントを含めて検索した。感染者数および家庭内被接触者の総数を報告する原資料を有する論文を検討対象とした。Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analysesガイドラインに従った。主要アウトカムは、変異株で層別化したSAR、感染源となる症例と被接触者のワクチン接種状況、感染源となる症例が特定されるまでの期間。感染への感受性(VES,p)、感染した場合の感染力(VEI,p)、およびワクチン効果(VET,p)に対する感染確率に基づいて、SARはワクチン効果を推定するために使用された。
 
結果
 2021年から2022年を中間点とする33試験(37.3%;95%CI、32.7%~42.1%)では、2020年4月までを中間点とする63試験(15.5%;95%CI、13.2%~18.2%)に比べ家庭内SARが高かった。家庭内SARは,オミクロン株(7試験)が42.7%(95%CI,35.4%~50.4%)、アルファ株(11試験)が36.4%(95%CI,33.4%~39.5%)、デルタ株(16試験)が29.7%(95%CI, 23.0%~37.3% )、ベータ株(3試験)は22.5%(95% CI, 18.6%~26.8% )であった。ワクチン接種済みの場合、VES,pはアルファ株で78.6%(95%CI, 76.0%~80.9% )、デルタ株で56.4%(95%CI, 54.6%~58.1% )、オミクロン株で18.1%(95%CI, -18.3%~43.3% )であった。VEI,p はアルファ株で75.3%(95%CI, 69.9%~79.8 )、デルタ株で21.9%(95% CI, 11.0% − 31.5%)、オミクロン株で18.2%(95% CI, 0.6% − 32.6%)、VET,pは、アルファ株で94.7%(95% CI, 93.3% to 95.8%)、デルタ株で64.4%(95% CI, 58.0% to 69.8%)、オミクロン株で35.8%(95% CI, 13.0% to 52.6%)であった。
 
結論
 これらの結果は,懸念されるSARS-CoV-2の変異株は、感染力が増大していることを示唆している。ワクチン接種により、感受性および感染性が低下していたが、デルタ株およびオミクロン株よりも、アルファ株でその傾向(感受性と感染性の低下)が強かった。ウイルスが進化するとワクチン効果が低下したことから、効果的なワクチンを開発することは困難である。