小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

カバ咬傷は、もはや動物咬傷のレベルではない

以前、亀田総合病院の「咬傷・外傷後の抗菌薬」の改定作業を行いました。

臨床ガイドライン | 亀田総合病院 の中にあります)

日本だと、イヌ・ネコ・ヒトの咬傷が多いのですが、世界は広いです。

 

カバは、可愛らしい見た目によらず、獰猛な動物で、人が襲われることがあります。

今回、紹介するのはカバ咬傷の世界最大規模(!?)のケースシリーズです。

もはや、咬傷というより、高エネルギー外傷です。

ブルンジの川や湖で泳ぐ時には、気をつけてください。

 

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https://www.birdlife.org/worldwide/news/surprise-hippo-invades-bird-walk-burundi

から引用)

 

Hippopotamus bite morbidity: a report of 11 cases from Burundi
Oxf Med Case Reports. 2020 AAug 10; 2020(8):omaa061.
 カバはアフリカで最も愛されている動物のひとつだが、その一方で攻撃的で危険な存在でもある。自然の生息地の近くに人間と共存していると、人に危害を加えるの確率が高くなる。カバに襲われて重傷を負うことは以前から認識されていたが、その程度や負担はよく分かっていない。カバ咬傷際の傷害やその経過を記述した文献は非常に少ない。我々は、ブルンジでカバ咬傷11人の患者のコホートを報告する。我々の知る限り、これはカバ咬傷の臨床症状、受傷パターン、手術の結果について報告した最大のケースシリーズである。本研究では、創部の感染症、四肢切断、後遺障害などの合併症の発生率が高いことが示された。カバ咬傷は、単なる「哺乳類に噛まれた傷」ではなく、重篤な外傷としてトリアージされるべきである。
 
11症例の内訳
男:女=9:2
年齢:18−57歳
ほとんどが河川またはタンガニーカ湖の水辺で起きた
(3名が泳いでいる時、2名が魚釣り中、1名が選択中、2名が農作業中、3名は不明)
受傷時間が判明している9名のうち、7名が日中、2名が夜間
全例入院(平均入院日数 18.6日)、6名が輸血、全例外科手術が必要。
外傷部位:下肢8名、上肢5名、胸腹部の穿通創4名。
感染症:深部感染症5名、慢性骨髄炎2名
6名が後遺症を残した。
 

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