小児の誤嚥性肺炎は、神経疾患などの基礎疾患がある子が大半です。いわゆる「寝たきり」のため自覚症状の問診は困難(ほぼ無理)で、他覚的所見も取ることが難しいです。そのため、ついつい長期間の抗菌薬投与が多くなります。
今回紹介するのは、米国の小児病院で行われた市中肺炎(CAP)と誤嚥性肺炎の患者特性や入院の特徴の比較研究です。予想されたとおり、基礎疾患がある子に多く、入院期間が長く・費用が高く、より重症化しやすいです。
一方で、抗菌薬適正使用については改善の余地があるデータかと思いました。
要点
・小児の誤嚥性肺炎は、複雑な慢性疾患を有する医療的ケア児に多い
・入院期間が長い、費用が高い、ICU入院率が高い、再入院率が高い。
Characteristics of Children Hospitalized With Aspiration Pneumonia
Hosp Pediatr . 2016 Nov;6(11):659-666.
目的:
市中肺炎(CAP)と異なり、小児の誤嚥性肺炎の患者特性や入院の特徴を示すデータは少ない。そこで、米国の小児病院の大規模データベースを用いて、誤嚥性肺炎に関連する患者と入院の特徴を評価し、CAP患者と比較した。
方法:
2009 年から 2014 年の間に Pediatric Health Information System に含まれる 47 病院で誤嚥性肺炎または CAP の診断を受けて入院した小児を対象とした。誤嚥性肺炎とCAP患者の間で、患者特性(年齢中央値、複雑な慢性疾患を持つ割合)、入院の特徴(在院日数、ICU入室、費用、30日再入院率)に違いがあるかどうかを評価した。季節的変動があるかどうかを評価した。
結果:
6年間の研究期間中、誤嚥性肺炎で入院した患者は12,097人、CAPで入院した患者は121,489人であった。CAPと比較して、誤嚥性肺炎の患者は年齢がやや高く(abstractではyoungerとなっているが、本文および表ではolderが正しい)、複雑な慢性疾患を有する可能性が高かった。誤嚥性肺炎の患者は、入院期間が長く、ICUへの入室率が高く、30日後の再入院率も高かった。また、誤嚥性肺炎の子どもの入院費(中央値)は、CAPの子どもの2.4倍であった。また、誤嚥性肺炎に比べ、CAPによる入院は季節変動が見られた。
結論:
本研究の補足
- データは、米国の47の小児病院のデータベース(PHIS)を使用した後方視的コホート研究。
- 米国の小児の入院件数の15%程度を占める人数。
- 誤嚥性肺炎(n=198、1.6%)は、CAP(n=425、0.4%、P<0.001)と比較して死亡率が高い。
- 誤嚥性肺炎は、CAPに比べて複雑な慢性疾患(CCC)を持っている割合が多い(87%対36%、P < 0.001)。
- 誤嚥性肺炎の66%、CAPの15%が、医療的ケア児。
- ICUでの治療を必要とする割合は、誤嚥性肺炎で3倍高かった(33% vs. 12%、P < 0.001)。
- 30日以内の再入院は、誤嚥性肺炎で36%、CAPで16%(P < 0.001)。
→ちょっと高すぎる。 - 誤嚥性肺炎の小児では、セファロスポリン(46%)、クリンダマイシン(44%)、アンピシリン/スルバクタム(40%)がよく処方されている
→このデータからは、治療チームが起炎菌として嫌気性菌を重要と考えていることが示唆される。しかし、成人では嫌気性菌のカバーがそれほど重要ではないことが分かっており、セフトリアキソンでも治療可能。ここは改善の余地がある。
- CAPでは、24.6%の症例でのみペニシリン系抗菌薬が使用されている。
→ここも改善の余地はある。(より重症をみている可能性も高いが。)