小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児におけるセフトリアキソンの副作用

 セフトリアキソンは、第3世代セファロスポリンとうカテゴリーの抗菌薬です。市中肺炎、尿路感染、髄膜炎など、幅広い感染症に使用できる抗菌薬で、かつ1日1回投与で済むので、感染症診療には非常に重要な薬剤です。

 一方、新生児では核黄疸のリスクになるため、使用が禁忌です。小児科では、セフォタキシムのほうが好んで使われます。夜間や早朝の投与がなくなるだけで、入院中のお子さんと付き添いの保護者のQOLが上昇すると思います。

 しかし、セフトリアキソンには特有の副作用があり、まとめて知っておく必要があるので、まとめました。

 

要点

・胃腸症状(下痢)の頻度は高い (37%)、ついで、胆肝膵の障害 (24%)が多い。

重篤な副作用は、胆道偽胆石症 (biliary pseudolithiasis)と溶血性貧血。

・溶血性貧血は、鎌状赤血球症では致死的になることがある。

 

Safety of ceftriaxone in paediatrics: a systematic review
Arch Dis Child. 2020;105:981
 
目的
 小児におけるセフトリアキソンの安全性を明らかにし、薬物有害反応(ADR)のカテゴリーと発生率を系統的に評価すること。
 
方法
 2018年12月までに発行されたMedline、PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、CINAHL、International Pharmaceutical Abstractsおよび関連する論文で、18歳以下の小児においてセフトリアキソンの安全性を評価したあらゆる種類の研究を対象に、系統的レビューを行った。
 
結果
 セフトリアキソン投与を受けた5717人の小児を対象とした112件の研究が組み入れ基準を満たした。1136件のADRが報告された。前方視的研究で報告されたADRで最も多かったのは胃腸(GI)症状(37.4%、292/780件)、次いで肝胆膵障害(24.6%、192/780件)であった。また、86例で、セフトリアキソンの休薬・中止に至る重篤ADRが報告された。主な理由は、溶血性貧血(34.9%、30/86例)と胆道偽結石(26.7%、23/86例)でした。セフトリアキソン静注後の溶血性貧血は、原疾患が鎌状赤血球症であった11名が死亡した。ほとんどの胆道偽結石は可逆的である。しかし、発生率は高く、小児の5人に1人(20.7%)が発症した。
 
結論
 小児においてセフトリアキソンの使用により、胃腸症状のADRが最も多くみられた。溶血性貧血と胆道偽結石症は最も重篤ADRであり、セフトリアキソンを中止する主な理由となっている。溶血性貧血は鎌状赤血球症で起こりやすく、死亡例もある。
 

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