小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

サルモネラの感染経路まとめ(Uptodateより)

 昨日のブログで、ショッピングカートに赤ちゃんと肉を一緒に乗せると、サルモネラ感染のリスク因子となります。
 サルモネラ感染症の経路について、まとめました。
 
 サルモネラの感染経路は、大きく2つに分類される。1つ目は、食品媒介感染症、鶏肉・卵が有名ですが、その他にもいろんな食品が原因となります。きゅうりやスプラウトなどでのアウトブレイクも報告されており、注意が必要です。2つ目が、動物からの感染になります。両生類や爬虫類サルモネラを保菌している確率が高く、特にカメの飼育はリスクと考えられています。他にも、家で飼っているニワトリなど家禽類からの感染もあります。
 獣医業界では、ドッグフードやキャットフードがサルモネラに汚染されて、ペットがサルモネラ腸炎になった報告もあります。イヌやネコがサルモネラを保菌することはありますが、自宅で飼っているペットからの感染例は非常に少ないようです。
 
以下はまとめです
(1)食品媒介感染
 非チフスサルモネラは動物が保菌しており、農産物とも関連している。1998年から2008年の間に米国疾病対策予防センター(CDC)に報告された、病原体が確認された食中毒のアウトブレイク7998件のうち、サルモネラが最も多い細菌であった。サルモネラアウトブレイクは、鶏肉と卵に関連したものが多かったが、卵に関連するサルモネラアウトブレイクの割合は減少し、他の多くの食品がアウトブレイクに関連することが明らかになってきた。
 
1−1 鶏肉・卵
 鶏肉と卵の摂取は、非チフスサルモネラ感染の危険因子となる。サルモネラは、鳥から卵の殻の中に移行する可能性がある。正常な外観の卵であっても感染を媒介する可能性がある。卵がS. Enteritidis に汚染されている頻度は、群の中の鶏での保菌率や、卵の生産時期によって変化する。米国で卵がサルモネラに汚染されている頻度は、2万個に1個とされている。
 大量の卵がプールされ、汚染された食品が全国に流通し、アウトブレイクに広がる可能性もある。一例として、アイスクリームが原因で、全国で224,000件のS. Enteritidis感染が発生した報告がある。汚染源は、アイスクリーム原料を輸送するタンカーであったが、このタンカーはかつて卵を運ぶために使用されていた。
 
1−2 その他の食品・栄養補助食品
 非チフスサルモネラは、生鮮食品、食肉(牛挽肉やドッグフード)、魚、牛乳、ナッツバター、香辛料、その他の食品、および汚染された水にも関連している。汚染は食品加工経路の過程で発生する可能性があり、先進国では、製造工程の工業化、集約化、グローバル化が進んでいるため、アウトブレイクにつながることがある。
 規制外のハーブもサルモネラに汚染される可能性がある。一例として、オピオイド離脱の自己治療に使用されるハーブであるクラトムは、2018年に発生したアウトブレイクに関連し、強制リコールされた。
 サルモネラアウトブレイクは広範囲に及ぶ可能性がある。米国では2010年から2014年の間に、複数の州にまたがる120件の食中毒発生が報告され、その大部分はサルモネラ菌によるものであった。サルモネラアウトブレイクは、果物、種子付き野菜、もやし(スプラウト)、ナッツに関連したものが多く、最大級のアウトブレイクは、卵、家禽類、マグロに関連していた。過去数年間に発生した重要なアウトブレイクは、キュウリに関連した S. Newport(275件)、もやし(スプラウトに関連した S. Enteritidis(115件)、冷凍生マグロに関連した S. Paratyphi(65件)、豚肉に関連した Salmonella Infantis(192件)、家禽に関連した Salmonella Heidelberg(2回のアウトブレイクで768件)などがある。
 乳児におけるサルモネラ感染は粉ミルクと関連している。また、乳児をショッピングカートに乗せ、その隣に肉や鶏肉を入れることも、サルモネラ症の危険因子であることが示唆されている。乳児を対象としたケースコントロール研究では、母乳育児が乳児期のサルモネラ感染症を予防することが示唆されている。
 
 
(2)動物接触
 サルモネラの感染は、食事のほかに、爬虫類や両生類(ヘビ、トカゲ、カメ、イグアナ、カエルなど)、ヒヨコやアヒルを含む生きた家禽類、ネコやイヌ、その他のペット(ハムスター、マウス、ラット、ハリネズミ)、ペットフードとの接触も原因となる。
 
2−1 爬虫類と両生類
 1996年と1997年に米国で実施された症例対照研究では、散発のサルモネラ感染症の6パーセントの原因が爬虫類と両生類との接触であり、21歳未満では21パーセントを爬虫類との接触が占めていると推定されている。ミシガン州からの報告で、5歳以下のサルモネラ感染症の12%が爬虫類に関連していた。多くはカメが原因であると考えられている。
 米国CDCは、5歳未満や免疫不全の患者は爬虫類との接触を避けることを推奨している。ペットのカメに関連したサルモネラアウトブレイクでは、40%が1歳未満の乳児であった。
 
2−2 家禽類
 家禽類(自宅で飼っている鶏を含む)は、あまり認知されていないサルモネラ菌の感染源である。2004−2011年の間に、米国の複数の州から、Salmonella Montevideoによる316件の感染事例が報告された。患者の大半は5歳未満の小児であり、発症1週間前に生きた若い家禽(多くはペット)との接触を報告している。家禽類がサルモネラ感染のリスクであると知っていた患者はわずか21%で、鳥を購入した時にリスクを知っていたのはわずか7%であった。米国では年間約 5,000 万羽の生きた家禽が販売されているため、影響は非常に大きい。CDC は、特に飲食物が調理されたり提供されたりする場では、生きた家禽を家の中で飼うべきではないと推奨している。生きた家禽やその環境に触れた後は石鹸と水で手を洗い、5 歳未満の小児や免疫不全者は、鳥のヒナやアヒルなど家禽を扱わないようにしなければいけない。
 
2−3 他の動物
 ペットがサルモネラ感染の発生源であることが確認されることはほとんど無い。しかし、病気のペットから人への感染が起こる可能性がある。ペットフードやペット用おやつも、家庭でのサルモネラの感染源である可能性がある。お祭り・農場、動物園などの場で動物曝露に関連した腸炎アウトブレイクが複数報告され、サルモネラが22%を占めている。
 
2−4 ヒトからの感染
 アウトブレイクで入院した患者と、医師、他の患者とから、同一のサルモネラ菌分離株が感染したという報告がある。フルオロキノロン耐性サルモネラアウトブレイクが、ヒトからヒトへの感染や汚染された環境表面との接触によって起きた報告もある。