腰椎穿刺を行う時、なかなか髄液が採取できないことありますよね(私はあります)。そんな時、刺入している向きが間違っているのか、脊柱管がもっと深くて、まだ届いていないだけなのか、分からないので困ってしまいます。
この論文は、年齢や体重などのデータから、髄液検査の針を何cmまで入れれば良いか、教えてくれる論文です。
まず、定義ですが、論文中に使用されるMSCD=「皮膚から脊柱管の中心までの距離」になります。(図参照)実際には、針が少しでも脊柱管に入ったら、髄液は引けるので、MSCDの深さまで入れなくても、髄液が出てくることがあるはずです。一方、針がMSCDよりも深く入っているのに髄液が出てこない時は、針先の方向が違うのでは無いかと考えたほうが良さそうです。
腰椎穿刺の針を入れて良い目安の距離は
MSCD (mm)=体重×0.4+20
対象:3歳〜18歳(体重 6〜80kg)
Weight-based determination of spinal canal depth for paediatric lumbar punctures
Bailie HC, et al. Arch Dis Child. 2013;98:877.
目的:
本研究の目的は、超音波を用いて測定した脊柱管の深さ(SCD)(注:皮膚から脊柱管までの距離)が、簡単な測定値から推定できるかどうかを、小児において評価することであった。
方法:
0~18歳の225人の小児を対象に、超音波を用いて左側臥位でSCDを測定した。統計解析は、5%有意水準のピアソン相関係数を用いて行った。また、年齢、性別、身長、体重、体表面積の5つの予測因子を含む中線形回帰分析を行った。
結果:
コホート全体の平均MSCD(注:皮膚から脊柱管の中心までの距離)は33.0mm(18.1-56.4)であった。MSCD(mm)と体重(kg)との間には、MSCD=体重×0.4+20(R2=0.72)に近似した線形相関が認められた。体重はデータの分散の85%を占めていた(調整後R2=0.72)。23/225例(10.2%)で実際に測定されたMSCDが予測の範囲を外れた。MSCDは10kgで24mm、30kgで32mm、50kgで40mmと推定された。
結論:
大規模な小児の集団において、体重とMSCDの間には良好な相関関係があることを示した。MSCD (mm)=体重×0.4+20という単純な式を使用することで、小児集団における腰椎穿刺の成功率が向上する可能性があるが、まだ検証されていない。
(対象は3ヶ月・6kg以上であり、新生児・乳児期早期に関してはデータなし)
年齢や身長でも相関関係がありますが、体重との相関が一番良さそうです。
とても相関関係が良さそうです