小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

米国と他国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の超過死亡

<要点>
OECD諸国の中で、韓国・日本・オーストラリアは、COVID-19による死亡率が低い
・もし、米国が日本と同等の死亡率に抑えることができていたら、
 今よりも死亡者は 194,711人(米国のCOVID-19死亡者の98%)少なかったはず
・春先の米国の死亡率は、イタリアなど他の国より低かったが、5−6月以降は、米国の死亡率が他国と比較して高いままになっている。
 
→米国は人口あたりのCOVID-19死亡率がとても高い、
 他国が死亡率を下げている中、ずーっと高いままになっている
 公衆衛生のインフラが脆弱で感染対策も一貫していないのが良くない
 JAMAで、こんなに米国の対応を批判するのも珍しい。
COVID-19 and Excess All-Cause Mortality in the US and 18 Comparison Countries
JAMA 2020. Oct. 12
 
 
はじめに
 米国は他国よりも多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡者を出しており、人口10万人あたりの累積死亡率が最も高い国の1つである。感染予防策がとられる前に患者数が急増し、長期的にまずい感染対策を行ったことが、米国の死亡率にどの程度影響を与えたかは不明である。
 
方法
 人口が 500 万人以上、1人当たりのGDPが 25,000ドル以上の経済協力開発機構OECD)加盟国と米国を比較した。それぞれの国について、人口10万人あたりのCOVID-19死亡率を算出し、3つにグループ分けした。1)低い(死亡者数<5/10万人)、(2)中等度(5-25/10万人)、(3)高い(>25/10万人)。
 パンデミック開始(2月13日)から米国の人口当たりのCOVID-19死亡率が各国と同等であった場合、政策介入の時間差を考慮して5月10日または6月7日以降に米国の死亡率が他国と同等になった場合について、検討した。
 2020年7月25日(第30週)までのデータが公開されている国の人口当たりの全死因死亡率も考慮した。これは、COVID-19の死亡統計分類が国により異なるので、大まかな指標として使用でき、間接的なパンデミックの影響を反映している。我々は、各国と米国について全死因の超過死亡率(2020年の平均死亡者数と2015-2019年の対応する週の死亡者数との差)を推定し、ポアソン回帰を用いて、上述のように各国と米国との間の全超過死因死亡率の差を推定した。すべての解析にRソフトウェア(バージョン4.0.2)を使用した。
 
結果
 2020年9月19日、米国は合計198,589人のCOVID-19による死亡(60.3/10万人)を報告しており、COVID-19による死亡率は、他の死亡率の高い国と同等である(表1)。例えば、オーストラリア(死亡率が低い)は10万人当たり3.3人、カナダ(死亡率が中等度)は10万人当たり24.6人であった。一方、イタリアは10万人あたり59.1人の死亡があり、ベルギーは10万人あたり86.8人であった。米国とオーストラリアの死亡率と比較すると、米国がもしオーストラリアの死亡率と同じになった仮定すれば、COVID-19による死亡が187,661人(報告された死亡の94%)減少し、カナダと同じになったと仮定すると117,622人(59%)減少することになる。
 

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(表1の抜粋。日本は10万人あたりのCOVID-19死亡率は1.2で、OECD諸国の中で、韓国についで低い(素晴らしい!)。そして、もし米国が日本と同程度までCOVID-19死亡率を下げることができたと仮定したら、米国のCOVID-19死亡者の98%に当たる194,711名の死亡を減らせたことになる。)
 
 春先の米国の死亡率は、他の死亡率が高い国よりも低かった。しかし、5月10日以降は高死亡率の6カ国で10万人当たりの死亡数が米国よりも少なくなった。例えば、5月10日から9月19日までの間、イタリアの死亡率は9.9/10万人であったのに対し、米国の死亡率は36.9/10万人であった。もし米国が5月10日以降の死亡率をイタリアなど他の死亡率が高い国と同じくらいに抑制できれば、死亡数は44,210人から104,177人(22%~52%)減少していたであろう(表1)。米国の死亡率が6月7日の時点で、同等の死亡率であったとすれば、死亡数は28%から43%減少していたであろう。
 
 全死因死亡率のデータがある14カ国では、COVID-19が原因の死亡数の傾向は、全超過死因死亡率と同様であった(表2)。COVID-19による死亡率が中等度の国では、全超過死亡は、パンデミックであっても無視できる程度であった。COVID-19の死亡率が高かった国では、全死因の超過死亡率はスペインで102.1/10万人に達し、米国では71.6/10万人であった。しかし、5月10日と6月7日以降は、米国の方が全死亡率の高い国に比べて全死亡率が高かった(表2)。
 
議論
 他国と比較して、米国では2020年9月までCOVID-19関連死亡率が高く、全死因の超過死亡が上昇した。春先に最初のピークを迎えた後も、米国のCOVID-19による死亡率および全死因による死亡率は、他国よりも高いままであった。これは、公衆衛生インフラの脆弱さや、パンデミックに対する米国の分散した一貫性のない対応など、いくつかの要因の結果であると考えられる。 
 この分析の限界には、死亡リスクの違いが含まれている。米国の人口は他の国に比べて若いが、併存疾患が多い 。
 

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