小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

リウマチ熱の再発予防の指針

 先日に引き続き、リウマチ熱関連のまとめです。
 
 急性リウマチ熱(ARF)は、A群溶連菌感染後に、発熱・関節痛・紅斑などの症状が見られ、心炎が最も重要な合併症です。
 急性リウマチ熱に明らかに罹患した患者とリウマチ性心疾患患者は、再発予防のため、抗菌薬の予防投与が必要になります。
 
 急性リウマチ熱の初期治療で使用する抗菌薬は、GAS咽頭炎に対する標準治療と同じです。基本的には、アモキシシリン10日間が選択されます。
 
 急性期の治療に続いて、予防を開始することになります。予防のための抗菌薬投与の期間は、下記のようになります。とりあえず、長いです。心炎と弁膜疾患合併の有無により、内服の期間が異なります
 
AHAが推奨する予防投与期間
分類
期間
心炎のないARF
最後のARFエピソードから5年または21歳になるまで、
どちらか長い方
心炎はあるが、心臓後遺症の
ないARF(弁膜疾患なし)
最後のARFエピソードから10年または21歳になるまで、
どちらか長い方
心炎と心臓後遺症のあるARF
(弁膜疾患あり)
最後のARFエピソードから10年または40歳になるまで、
どちらか長い方
弁膜疾患が重症の場合や、GAS感染に曝露する機会がある場合(学童期の子どもを持つ親、教員など)には、
生涯にわたり予防投与を考慮する
 
 
 つづいて、予防投与のレジメンです。
 AHAの推奨では、米国ではアドヒアランスが確実な、ペニシリン筋注が好まれるようです。
 
<AHAが推奨するレジメン>
薬剤
投与量
投与方法
ペニシリンGベンザシン
120万単位、4週間毎
60万単位、4週間毎(BW 27.3kg以下)
筋注
250mg、1日2回
経口
スルファジアジンまたはスルフィソキザール
0.5g、1日1回(BW 27kg以下)
1g、1日1回(BW 27kg以上)
経口
マクロライド、アザライド系
適宜
経口
 
 
 国内では、筋注用ペニシリンが無いので、経口ペニシリンが選択されます。バイシリンGの投与量に関して明確なガイドラインが見つけられませんでしたが、以下のような記載を見つけました。
 
ベンジルペニシリン(バイシリンG)20−40万単位/日 分1−2
                    (武井修治著 今日の臨床サポート)
 
 注意:AHAのペニシリンVの推奨投与量に合わせるなら、
    ペニシリンV 250mg q12h→バイシリンG 40万単位 1日2回 となります
   (ペニシリンG 160万単位=1gは、覚えておくと良いと思います。)
   しかし、ARF再発予防に関して、異なるレジメンを比較した研究は、
   検索した限りでは見当たらず、どのレジメンが正しいということは言えません。
 
 現在、バイシリンGの出荷調整が続いており、入手が困難になっています。そのため。以下のうようなレジメンで予防投与を行っている報告もありました。
 
・アモキシシリン 10mg/kg/day(井福ら 小児感染免疫 2016;28:99)
  
 また、ペニシリンアレルギーの場合、次の代替薬はスルファジアジンとなりますが、
国内では使用できないので、ST合剤が代替薬となります。