小児感染症科医のお勉強ノート

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黄色ブドウ球菌菌血症が持続するほど予後が悪い

Defining the Breakpoint Duration of Staphylococcus aureus Bacteremia Predictive of Poor Outcomes
Clin Infect Dis. 2020;70:566-73.
 
黄色ブドウ球菌菌血症の死亡率は成人で19−57%と報告され、1/3程度の症例で菌血症が持続する。IDSAガイドラインではMRSA菌血症が7日間以上持続する場合には、抗菌薬の変更を推奨している。
この研究では、黄色ブドウ球菌の菌血症持続日数と患者予後の関係を検討した。
多施設の前方視的観察研究で、成人の入院症例を対象とした。菌血症の持続日数を、短期short(1−2日間)、中期intermediate(3−6日間)、長期prolonged(7日以上)に分類した。
884名の患者の内、短期が63%、中期が28%、長期が9%であった。年齢の中間値は57歳、70%が男性であった。長期に菌血症が持続した患者は、MRSAの割合が高かった(短期30%、中期31%、長期58%がMRSA)。抗菌薬選択と菌血症の持続時間に関連はなかった。しかし、感染巣のコントロールまでの時間と菌血症の持続時間には関連を認めた。菌血症の持続時間が長いほど、播種性病変、入院期間、死亡率が増加した。死亡率は、短期で5%、中期で11%、長期で22%であった。菌血症が1日持続するごとに、死亡リスクは1.16 (95% CI, 1.10-1.22; p<.001)増加する。
結論:黄色ブドウ球菌菌血症に対しては、菌血症を解消することを目標に、なるべく早く感染巣のコントロールを行うことが重要である。