小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

皮疹(手足の落屑)・肝脾腫のある敗血症では先天梅毒を疑う

 
新生児の先天梅毒と他の細菌による敗血症は臨床像がかなり異なる
Differences between congenital-syphilis presenting as sepsis and neonatal sepsis A case-control study
Medicine (Baltimore). 2019;98(44):e17744.
 
 新生児の先天梅毒は、敗血症として発症するものがあり、重症化する事があります。 しかし、実際には初診時に外来で先天梅毒の診断をつける(疑う)ことは極めて困難です。本研究は、中国国内の病院で実施された、ケースコントロール研究です。先天梅毒と血液培養陽性の敗血症の臨床像の差異を検討しました。
 58症例が対象です。先天梅毒29例と菌血症29例です。先天梅毒群は、1名が死亡し、12例(41.3%)が多臓器不全を合併しました。先天梅毒で多く見られた所見は、皮疹、手掌と足底の落屑、腹部膨隆、脾腫、肝腫大です。検査では、先天梅毒では、Hb低い、Plt低い、WBC高い、CRP高い、凝固異常多い、AST/ALT高い、髄液所見異常が多いなどの差異がありました。
 有意差は無いものの、先天梅毒では13.8%に鼻出血があることも特徴的かと思いました。
 
  先日の小児感染症学会でも、新生児の先天梅毒の症例が多く報告されており、敗血症症状を来して、受診した症例もありました。敗血症を見たときには、妊娠経過や妊娠中の母体スクリーニング結果を確認することが重要です。また、皮疹や肝脾腫がある敗血症では、梅毒の確認が重要と思われます。
 
 
 

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