小児感染症科医のお勉強ノート

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肺炎球菌関連の溶血性尿毒症症候群(HUS)は肺炎球菌ワクチン(PCV13)導入後に減少している

Pediatr Infect Dis J. 2019 Jun 20. doi: 10.1097/INF.0000000000002368. [Epub ahead of print]

Pneumococcal-related Hemolytic Uremic Syndrome in the United Kingdom: National Surveillance, 2006-2016.

Makwana A, et al.
 
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、O157などの腸管細菌感染症により引き起こされることが多いが、稀に肺炎球菌感染により起きる(pHUS)。
英国では、2006年に肺炎球菌ワクチン(PCV7)が導入され、2010年にPCV13が導入された。英国国内の侵襲性肺炎球菌感染症サーベイランスデータを用いて、2006年9月1日から2016年3月31日までに報告された5歳未満のpHUS症例を対象とした。
54例のpHUS症例の報告があった。年齢の中央値は17ヶ月。2006-2009までは0.25/100,000の発生率であったが、2010年以降は0.08/100,000に発生率が低下した(incidence rate ratio: 0.31; 95% CI: 0.16-0.57; p<0.0001)。22%の症例で発症前に基礎疾患があった。57%(31例)の症例が下気道感染症、25%(14例)が髄膜炎、15%(8例)が菌血症、2%(1例)が化膿性関節炎であった。
下気道感染症の31例中、26例(84%)が膿胸を発症、髄膜炎14例中5例(36%)が脳膿瘍を発症した。血清型の頻度は、19A, 3, 7F, 33Fの順であった。死亡率は15%であった。
 
結論:pHUSはPCV13導入後に減少はしている。しかし、死亡率・後遺症を残す割合の多い疾患である。現在は、PCV-13に含まれないタイプの血清型が多くなっている。
 
 肺炎球菌感染症の、稀な合併症ですが、注意が必要です。多くの症例が膿胸や髄膜炎などの重症な合併症を発症しており、かなり重篤な病態で、このpHUSが起こりやすいことが推測されます。pHUSの頻度が低下するというワクチン効果が見られている反面、serotype replacementが起きていることが興味深い研究です。
 
 
 

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