群馬県立小児医療センター アレルギー感染免疫科
論文の紹介
「高齢者のRSウイルス感染症は、インフルエンザよりも予後が悪い」
Severe Morbidity and Mortality Associated With Respiratory Syncytial Virus Versus Influenza Infection in Hospitalized Older Adults
Ackerson B, et al. Clin Infect Dis. 2019; 69(2): 197-203
2011年1月から2015年6月にアメリカのKaiser Permanente Southern Californiaに入院した60歳以上の高齢者のうちRSウイルス(RSV)感染とインフルエンザウイルス感染が証明された患者を対象に、電子カルテ情報をもとに行った後方視的コホート研究です。
RSVは645例、インフルエンザは1878例が対象になった。RSV感染者のほうが、少しだけ高齢で、うっ血性心不全・COPDを基礎疾患にもつ割合が高かった。
基礎疾患の違いなどを調整した多変量ロジスティック解析を行った結果、RSV感染はインフルエンザ感染と比較して、7日以上の長期入院・肺炎・ICU入室・COPD増悪のリスクが高く、死亡率も高かった。
RSVの予後が悪かった背景として、インフルエンザウイルスには抗インフルエンザ薬があるのに対して、RSVに対しては有効な抗ウイルス薬がないこと、インフルエンザワクチンによりインフルエンザウイルスの症状が緩和された影響も考えられる。他の論文でも、RSVは下気道感染をより起こしやすことが知られている。RSVは、乳幼児に重篤な気道感染症を起こすが、高齢者にとっても、重要な感染症である。
https://academic.oup.com/cid/article/69/2/197/5193205