乳児にとってRSウイルス(RSV)感染症は、大変な病気です。呼吸状態が悪化して入院となったり、まれですが脳炎などの重篤な合併症もあります。
私も小児科医になりたてのときに、受け持った赤ちゃんが、ひどい無呼吸発作になり、こども病院のドクターカーで患者さんを搬送していただいたことがあります。
今は、シナジスというモノクローナル抗体製剤があり、リスクが高い児(心疾患、未熟児、Down症候群、肺疾患など)では、毎月筋肉内注射することで、RSV感染の重症化が(ある程度)予防できます。
私も小児科医になりたてのときに、受け持った赤ちゃんが、ひどい無呼吸発作になり、こども病院のドクターカーで患者さんを搬送していただいたことがあります。
今は、シナジスというモノクローナル抗体製剤があり、リスクが高い児(心疾患、未熟児、Down症候群、肺疾患など)では、毎月筋肉内注射することで、RSV感染の重症化が(ある程度)予防できます。
しかし、シナジスは、高額・毎月の接種は大変などの問題がたくさんあります。(1回だけの製剤ニルセビマブが開発中です。)
今回の研究は、妊娠中の母に1回だけRSVのワクチンを接種したら、生まれてきた赤ちゃんの重症RSV感染症が減ったという報告です。これは、赤ちゃんに痛い思いをさせずに済む素晴らしい薬だと思います(さすがにNEJMに掲載されるだけある!)
実用化に向けて、更に治験が進むことを期待しています。
移行抗体の低下とともに、有効性が低下してくるので、生後6ヶ月以降は、ハイリスク児を何らかの形で予防する方法は必要だとは思います。
移行抗体の低下とともに、有効性が低下してくるので、生後6ヶ月以降は、ハイリスク児を何らかの形で予防する方法は必要だとは思います。
要点
・2価RSV perfusion Fタンパクワクチンを、妊娠24−36週の妊婦に1回筋注する
・出生した児の重症RSV下気道感染が、予防できる(90日以内81.8%、180日以内69.4%)
・出生した児の重症RSV下気道感染が、予防できる(90日以内81.8%、180日以内69.4%)
Prefusion F Protein-Based Respiratory Syncytial Virus Immunization in Pregnancy.
N Engl J Med. 2022 Apr 28;386(17):1615-1626.
背景
妊娠中にRSウイルス(RSV)ワクチンを接種することにより、新生児や乳児のRSVに関連した下気道感染を減らせるかを検討した。
方法
18カ国で実施されたこの第3相二重盲検試験は、妊娠24週から36週の妊婦を対象とした。2価RSV prefusionFタンパク(RSVpreF)ワクチン120μgを1回筋肉内注射する群とプラセボ群を1対1の割合でランダムに割り付けた。主要評価項目は、生後90日、120日、150日、180日時点において、病院受診した重症RSV関連下気道感染とRSV関連下気道感染の罹患率とした。ワクチン有効性の信頼区間の下限値が20%以上であれば、ワクチンが有効である基準を満たすとした。
結果
中間解析において、ワクチンの有効性の基準は、1つの主要評価項目(重症下気道感染)に関して満たされた。計3682人の妊婦にワクチンが、3676人の妊婦にプラセボが投与された。それぞれ3570人と3558人の乳児が追跡評価さた。医療機関を受診したRSV関連重症下気道感染は、生後90日以内にワクチン群6例、プラセボ群33例(有効率81.8%;99.5%CI 40.6~96.3)、生後180日以内に、19例、62例(有効率69.4%;97.58%CI、44.3~84.1)であった。(重症でないケースを含む)RSV関連下気道感染は、生後90日以内に、ワクチン群24例とプラセボ群56例であった(有効率57.1%;99.5%CI、14.7~79.8);この結果は、統計的に基準を満たさなかった。妊婦と生後24カ月以下の出生児に、安全性に関する問題は認めなかった。接種後1カ月以内または出生後1カ月以内に報告された有害事象の発生率は、ワクチン群(妊婦13.8%、児37.1%)とプラセボ群(妊婦13.1%、児34.5%)で同様であった。
結論
妊娠中にRSVpreFワクチンを投与すると、乳幼児において重症RSV関連下気道感染が減少する。安全性に関する懸念は確認されなかった。