小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

新型コロナの感染対策 エビデンスのある方法は?

 COVID-19および、SARS、MERS(どれもコロナウイルスによる重症呼吸器感染症)において、身体的距離・マスク・眼の保護が有効かを検討したメタアナリシスです。WHOが資金を提供して実施した研究です。結果としては、どれも8割以上有効です。海外では、まだ日常生活でのマスク着用が浸透していない国もあるようですが、このような基本的な対策の効果は、無視できないと思います。
 
【要点】
  • 身体的距離は1m確保できると、感染予防に有効 (aOR 0.18)
    -それ以上の距離を取れば、もっと有効
  • フェイスマスクは有効 (aOR 0.15)
    医療機関でも市中でも有効
    N95でもサージカルマスクでもアベノマスクでも有効
  • 眼の保護は有効 (aOR 0.22)
Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis
Chu DK, et al. Lancet. 2020; 395: 1973.
 
背景:
 新型コロナウイルスSARS-CoV-2)による感染症であるCOVID-19は、密接な接触を介して人から人へと感染する。本研究では、医療現場と非医療現場(地域社会など)におけるウイルス伝播に及ぼす物理的距離、マスク、目の保護の効果を調査することを目的とした。
 
方法:
 システマティックレビューおよびメタ解析を行い、ウイルス感染を予防する最適な身体的距離を調査し、ウイルス感染を防止するためのマスクおよび目の保護具の使用を評価した。SARS-CoV-2 と重症急性呼吸器症候群の原因となるベータコロナウイルスSARSのこと)、および中東呼吸器症候群(MERS)に関するデータを、WHOの情報源および COVID-19の情報源 21 ヶ所から取得した。2020年5月3日までの間に、言語によらず検索した。本研究はPROSPERO、CRD42020177047に登録されている。
 
結果:
 16 カ国 6 大陸の 172 件の観察研究が同定されたが、ランダム化比較試験は実施されておらず、44 件の研究が医療現場と非医療現場の両方で実施された(n=25,697)。感染は、身体的距離が1m以上の場合、1m未満の場合と比較して低かった(n=10,736、調整オッズ比[aOR] 0.18、95%CI 0.09~0.38;リスク差[RD]-10.2%、95%CI -11.5~-7.5;中程度の確実性)。予防効果は、身体的距離が長くなるにつれて増加した(相対リスク変化[RR] 2.02 per m;相互作用=0.041;中程度の確実性)。マスクは感染リスクの大きな減少につながる可能性がある(n=2647;aOR 0.15、95%CI 0.07~0.34、RD -14.3%、-15.9~-10.7、確実性低い)。ディスポーザブルのサージカルマスクと比較して、N95または類似マスクの方が予防効果は高かった。眼の保護も、感染の減少と関連していた(n=3713;aOR 0.22、95%CI 0.12~0.39、RD -10.6%、95%CI -12.5~-7.7;確実性低い)。
 
解釈:
 本システマティックレビューとメタアナリシスの知見は、1m以上の物理的距離をとることが有効であると示している。政策立案と接触者調査に有用な定量的な推定値である。公共の場や医療現場でのマスク、目の保護具の適切な使用は、知見に基づき情報提供されるべきである。これらの感染予防策に関するエビデンスを確実なものにするには無作為化試験が必要であるが、現在利用可能な最善のエビデンスを体系的に評価し、暫定的なガイダンスが得られる。
 
資金提供:WHO
 
 
 
相対的効果
(95% CI)
対策無しの感染率
対策ありの感染率
感染率の差
身体的距離
≧1m vs. <1m
aOR 0.18
(0.09-0.38)
12.8%
2.6%
-10.2%
マスク
あり vs. なし
aOR 0.15
(0.07-0.34)
17.4%
3.1%
-14.3%
目の保護
あり vs. なし
aOR 0.22
(0.12-0.39)
16.0%
5.5%
-10.6%
 主要な結果のまとめの表になります。マスクや身体的距離は日常生活で行いやすい対策ですが、アイシールドならともなく、ゴーグルやフェイスシールドのような確実は眼の保護はなかなか出来ないかもしれません。
 

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 身体的距離も、とりあえず1mを確保できると、感染予防にはかなり有効と思われます。3mになるとほぼ感染率がゼロになりますが、ここまで距離を取るのは、都市部では難しそうです。