小児感染症科医のお勉強ノート

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小児の壊死性筋膜炎。きっかけとなるイベントは…

 小児において、壊死性筋膜炎はレア疾患です。成人では、「発赤範囲を超える痛み」、「血液検査の結果を待っている間に進行」、「ショックになってる蜂窩織炎」などの臨床的特徴が参考になりますが、自ら訴えることができない小児の壊死性筋膜炎の診断はとても難しいです。
 
 この論文は、39例の小児の壊死性筋膜炎のケースシリーズです。死亡率が高く、後遺症が残る確率も高い、非常に怖い病気であることが再認識できます。
Necrotizing Fasciitis Report of 39 Pediatric Cases
Arch Dermatol. 2002;138:893.
 
 背景:壊死性筋膜炎(NF)は、重篤な生命に関わる軟部組織疾患である。小児のNFの一般的な特徴やリスク因子は、よく知られていない。
 
目的:小児のNFの特徴を明らかにし。死亡のリスク因子を明らかにする。
 
デザイン:小児三時医療機関で実施された後方視的観察研究
 
対象:1971年から2000年までに臨床歴・病理学的にNFと診断された小児症例。
主要アウトカム:発生率、年齢、性別、病変の部位・数、臨床的特徴、検査結果、入院時の診断、治療、予後、死亡のリスク因子である。
 
結果:対象となる患者は39例で、全入院の0.018%であった。21%(54%)が男児であった。平均年齢は4.4歳。21例(77%)が1箇所の病変で、うち21例(54%)が上肢または下肢であった。基礎疾患は、低栄養14例(36%)であった。入院時にNFと診断された症例は、11例(28%)であった。原因菌が特定できた症例は、24例(62%)であった。そのうち17例(71%)が複数菌感染、緑膿菌が最も分離される頻度が高かった。合併症は33例(85%)で認められ、7例(18%)が死亡した。生存した32例中29例(91%)で後遺症を残した。免疫不全状態が、死亡のリスク因子であった。
 
結論:小児のNFは、入院時には診断できないことが多い。免疫不全状態が死亡のリスクとなる。早期の外科的デブリードマンが最も重要である。
 
 Abstractには記載が無いが、39例中う3例(33%)が水痘をきっかけに発症していることが分かります。水痘では、時々重症の細菌感染を合併しますが、壊死性筋膜炎にも注意が必要です。水痘後の壊死性筋膜炎の報告は多く(イブプロフェンの内服がリスクになる)、注意が必要と言われています (Pediatrics. 1999; 103:783)。
 

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