小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

リウマチ熱と溶連菌感染後反応性関節炎の鑑別

 リウマチ熱(ARF)と溶連菌感染後反応性関節炎(PSRA)は、ともにA群溶連菌感染後に起きる、関節炎を呈する疾患です。関節炎の臨床像に違いがあるのか検討した論文です。
 
Differentation of Post-Streptococcal Reactive Arthritis from Acute Rheumatic Fever
Brash J, et al. J Pediatr. 2008;153:696
 
目的:急性リウマチ熱(ARF)と溶連菌感染後反応性関節炎(PSRA)の臨床的および検査的特徴を比較し、これらは別疾患なのか、あるいは同じ疾患の異なる臨床症状なのかを明らかにする。
 
方法:イスラエルの小児リウマチレジストリを用いて、標準化された基準で診断され、7つの医療センターの8人の小児リウマチ専門医によって治療されたARF患者68人とPSRA患者159人の記録を後方視的に検討した。これらの患者の診療録を患者背景、臨床症状、検査結果について検討し、データを単変量解析、多変量解析で比較・分析した。
 
結果:4つの変数(赤沈、CRP、治療開始後の関節症状の持続時間、治療中止後の関節症状の再発)がARFとPSRAの間で有意に異なることが判明した。診断の予測因子としても有用であった。導き出した判別式で、80%以上の患者を正しく分類することができた。
 
結論:臨床変数と検査変数に基づいて、ARFとPSRAを鑑別し、80%以上の患者を正しく分類することができた。ARFとPSRAは別個の存在であると考えられる。
 
 
【判別するための式】
 -1.568 + 0.015✕赤沈(mm)+0.2✕CRP(mg/dL)-0.162✕(改善までの日数)-2.04✕(再発 有:1, 無:0)
→>0ならリウマチ熱、≦0なら反応性関節炎と判断する
感度79%、特異度87.5%であった。
 
 
 
リウマチ熱
反応性関節炎
38℃以上の発熱
66%
16%
.0004
移動性関節炎
79%
33%
.004
罹患関節数(SD)
2.5 (1.2)
1.8 (1.3)
.0004
CRP (SD) mg/dL
10.67 (8.35)
2.26 (4.41)
<.0001
咽頭炎発症から関節炎発症までの日数 (SD)
15 (9.2)
14.6 (10.1)
NS
治療開始から改善までの日数 (SD)
2.2 (1.7)
6.9 (5.9)
<.0001
再燃
7%
21%
.013
 
 
 
 ARFとPSRAともに下肢の大関節が最も罹患しやすいが、ARFでは上肢の大関節が次に多く、PSRAでは上肢の少関節が多い。
 
 
 リウマチ熱(ARF)は、高熱が出て、移動性関節炎を呈し、心合併症も多い。しかし、治療反応は良好。反応性関節炎(PSRA)は、どちらかというと少関節炎が多く、治療してもなかなか良くならず、再発も多い
 
補足
咽頭炎から関節炎発症までの時間は、反応性関節炎で10日、ARFで2−3週間であることが多く、反応性関節炎の方が短いとする報告もある。
・腱炎や腱鞘炎の合併は、反応性関節炎に多いとされる。
 
 
A retrospective study: Acute rheumatic fever and post-streptococcal reactive arthritis in Japan
Sato S, et al. Algol Int. 2017;66:617.
 
  日本からも、ARFとPSRA両者をアンケート調査で比較した検討があります。
 対象症例数は、ARF 44例と、PSRA 21例です。
 ・ARFは、移動性関節炎が多く、CRPが高い傾向がありました。
 ・PSRAでは、手指の少関節炎が多く見られました。