小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

軟骨ピアス後の感染症に注意

 最近(?)人気の耳軟骨ピアスですが、術後の感染症に注意が必要です。

<要点>

・軟骨ピアス後の軟骨周囲炎は重大な合併症

緑膿菌が多い(初期治療を外しやすい)

・耳介カリフラワー状変形などの後遺症を残しやすい

・アフターケア液が汚染され、緑膿菌感染のアウトブレイクがある

 

【文献1】
Transcartilaginous ear piercing and infectious complications: A systematic review and critical analysis of outcomes
Sosin M, et al. General Otolarygology. 2015; 125: 1827.
 
 軟骨ピアス (transcartilaginous ear piercing)が、おしゃれで人気だそうです。軟骨ピアスに伴う合併症としての感染症に関する文献まとめたレビューです。
 
 2015年に発表された文献レビューで29文献・66症例の報告があった。平均年齢は18.7±7.6歳 (範囲11-49歳)、87.5%が女性であった。耳介変形が最も多い合併症で、耳輪helix(耳介上部の縁あたり)に軟骨周囲炎が生じた場合には43%、舟状窩scapha(耳輪と対輪のくぼみ)では100%であった。発症してから受診までの平均日数は、6.1±4.1日。発症後5日以上経過しての受診例は、入院率が有意に上昇した。原因菌は、緑膿菌 (Pseudomonas aeruginsoa)が87.2%を占めた。P. aeruginosaが起炎菌の場合には92.3%の症例が入院した。黄色ブドウ球菌では75%が入院した。初期抗菌薬が原因菌をカバーした割合は、53.3%で、その症例の87.5%は入院した。
 結論: 軟骨周囲炎は、耳介の変形を後遺症として残し、多くが入院を必要とする合併症である。軟骨ピアスを開けた後の感染症を見る医師は、適切な治療方針を知る必要がある。特に、舟状窩のピアスと、受診までの日数が長い場合には、予後が良くない。緑膿菌が原因菌として最多であるので、初期治療は緑膿菌をターゲットに含める必要がある。
 
 
【文献2】
Post-piercing perichondritis
Rev Bras Otorrinolaringol. 2008; 74: 933.
 
14歳の症例です。カリフラワー状の耳介変形を残すことが多いようです。
日本でも、柔道している人は似たような変形をしますね。

f:id:PedsID:20201012185721p:plain

 

f:id:PedsID:20201012185757p:plain

【文献3】

National outbreak of Pseudomonas aeruginosa associated with an aftercare solution following piercings, July to September 2016, England
Euro Surveill. 2018; 23: 1700795.
 
 2016年にイングランドで、ピアス後の緑膿菌感染症アウトブレイクが発生しました。162例のケースのうち、全員が耳ピアス(93%が軟骨ピアス)を開けており、年齢の中央値は18歳だった。ある会社のアフターケア液を使用している患者に感染発生と関連があることが判明した (aOR: 4.60)。
 美容・化粧品への規制と見直しと、ピアス後のアフターケアの方法に関する指導が重要と考えられた。
 
 

f:id:PedsID:20201012185904p:plain