小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児のElizabethkingia感染症

 Elizabethekingiaは、環境中に存在する多剤耐性Gram陰性桿菌(GNR)で、メロペネム耐性として有名です。かなりまれな菌ですが、「GNRだからメロペネムで大丈夫」って思っていると足元を救われます。キノロンが有効であることが多い菌です。
 
 変わった名前ですが、Elizabethekingiaという名前は、1959年に本菌を発見したElizabeth O. Kingに由来しています。もともと、Flavobacteriumに分類されていたのが、Chryseobacteriumになり、Elizabethekingiaになりました。緑膿菌などと同じく、ブドウ糖非発酵菌です。
 
 小児のElizabethekingia感染症の文献レビューです。耐性傾向が強い菌であり、基礎疾患を有する患者が多いため、予後は悪い(死亡率31.4%)です。
 
Elizabethkingia in children: a comprehensive review of symptomatic cases reported from 1944 to 2017
Dziuban EJ, et al. Clin Infect Dis. 2018;67:144.
 
 1944年から2017年までに、96本の論文で283例のElizabethekingiaの小児例の報告があった。3/4以上が新生児の症例であった。性別は、男児54.5%、女児45.5%であった。34.6%の症例(15本)が、院内アウトブレイク症例として報告されていた。15本の論文のうち13本がNICUでのアウトブレイクであった。
 菌種は、Elizabethekingia meningosepticaが97.9%を占め、E. anophelisが5例(香港がほとんど)のみであった。E. miricolaが1例(スイス、尿路感染症)であった。報告数は、US71例、インド35例、台灣35例、マレーシア32例であった。
 臨床症状は、73.9%が髄膜炎、23.7%が敗血症(髄膜炎と重複あり)、7.1%が別の感染巣による菌血症であった。まれな例として、脳室炎、気胸蜂窩織炎、化膿性関節炎、尿路感染症、腹膜炎、副鼻腔炎、硬膜下膿瘍などが報告されている。
 患者の多くが、免疫不全(白血病、肝移植後)、侵襲的治療後(腹部手術、脳室内シャント、腹膜透析)、長期入院中など、基礎疾患を有していた。
 死亡率は、31.4%であった。
 

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