小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、ギラン・バレー症候群(GBS)の発症をわずかに増やす可能性はあるが、他の自己免疫疾患の増加は起きない。

Human papillomavirus vaccination and the risk of autoimmune disorders: A systematic review and meta-analysis
Vaccine. 2019;37:3031
 
 フランスの200万人以上の女性について、HPVワクチンを接種した後の、自己免疫疾患の発症を、非接種群と比較したstudyです。2,252,716人のうち、HPVワクチンを接種したのは37%(少ない!)で、4,096人が33ヶ月のフォローアップ期間中に、自己免疫疾患(AID)を発症しました。AIDの発症率はワクチンにより増加せず。各疾患で見ると、ギラン・バレー症候群(GBS)のみ、10万接種あたり、0.4から1.4に上昇しました。Adjusted HR: 3.78 [1.79-7.98]です。特に接種後1ヶ月以内の発症が目立った。以上の結果から、HPVワクチンを10万人に接種すると、GBSが1−2名増加する可能性がある。
 
「ワクチンは、100%無害ではない」
「ワクチンは」というより「医療行為といえるものすべて」についていえます。このワクチンによってもたらされる利益と、生じうる副作用の可能性の両者を考えて、科学的に妥当な判断をしないといけない。ワクチンを接種しなければ、ワクチンの副作用は起きない。しかし、日本では年間3000人が子宮頸がんで亡くなっており、HPVワクチン接種を進めているオーストラリアなどでは将来的にHPVによる子宮頸がんがほとんど無くせるのではとまで言われるようになってきた。ワクチンで防げるはずの子宮頸がんで亡くなる人がたくさんいる現状は放置してはいけない。もちろん、副作用を生じてしまった方には十分な医療と補償が受けられる体制を維持し続けることが重要です。
 

f:id:PedsID:20191028184127p:plain