小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

ASP(Antimicrobial Stewardship Program)の抗菌薬以外のアドバイスで患者予後を改善する

Clinical impact of non-antibiotic recommendations by a multi-disciplinary antimicrobial stewardship team.

Ng TM, et al.  Int J Antimicrob Agents. 2017 Aug;50(2):166-170.

 

Tan Tock Seng病院のASTからの報告です。

AST=抗菌薬適正使用チームと思っていると、ASPは患者の抗菌薬のことさえ適正化できればよいかと思ってしまいます。

しかし、抗菌薬以外の推奨も、感染症の治療に重要で、推奨に従った方が予後が良くなりました。

 

2012年1月から2014年8月までの入院患者で、カルバペネムかピペラシリン・タゾバクタムの投与を受けていた患者が対象です。そのうち、抗菌薬以外の推奨をした患者を解析しました。

対象は166名です。30日死亡は、ASPの推奨に従った群は18.0%、従わなかった群は34.5%でした(p=0.02)。多変量解析を行っても、ASPの推奨に従うことは有意に死亡率の低下に関連しました。

 

そこで、気になる抗菌薬以外の推奨です

・血液培養の再検(陰性ならピペラシリン・タゾバクタムをde-escalationする)

・プロカルシトニン測定(<0.25なら抗菌薬を中止)

・胸部レントゲンとCRP再検

・細菌培養の提出

・IDチームへのコンサルト(薬剤熱疑い)

・胸部造影CT(肺塞栓疑い)

BNP測定(心不全なら抗菌薬中止)

・脳CTと細菌学的検査(中枢性発熱)

・腹部CT(膿瘍がなければ抗菌薬中止)

前立腺エコー(前立腺膿瘍の確認)

・膝のエコー(化膿性関節炎)

・IDチームへのコンサルト(好中球減少患者の感染巣精査)