小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

ペニシリンアレルギーの脱ラベルもASTの重要な活動

 何年も前にカルテに書かれた「ペニシリンアレルギーあり」の記載のために、ペニシリンが使えない患者さんは、結構たくさんいます。しかし、本来はペニシリンアレルギーではなく安全に使えるのに、リスクを考慮して、使用しないことがほとんどです。しかし、このような記載は患者さんに、適切な抗菌薬を使用できないことに繋がり、かえって安全なことではありません。AST活動の一環としてペニシリンアレルギーの脱ラベルに取り組んで成果をあげたオーストラリアからの報告です。
 
Evaluation of a pharmacist-led penicillin allergy de-labelling ward round: a novel antimicrobial stewardship intervention
Devchand M, et al. J Antimicrob Chemotherapeutic. 2019; 74: 1725-30.
抄録
背景:入院患者の最大25%にのぼると報告されている抗生物質アレルギー表示(AAL)は、適切な抗菌薬処方を行う上で重要な障害となっており、抗菌薬スチュワードシップ(AMS)プログラムの焦点となっている。
 
方法:Austin Health(オーストラリア、メルボルン)で行われた薬剤師主導の AMS ペニシリンアレルギー脱ラベル病棟ラウンドのプロスペクティブ監査を評価した。ペニシリンアレルギーがあるとカルテに記載され抗生物質の投与を受けている入院患者を電子カルテを介して特定され、今回の研究対象とした。薬剤師主導のAMSチームによってレビューされた。評価された監査結果は以下の通りであった。(i)AMSによる処方後レビューの推奨、(ii)直接のアレルギー表示解除、(iii)入院での経口再チャレンジ試験の紹介、(iv)皮膚プリックテスト/皮内テストの紹介、(v)外来で抗生物質アレルギー評価。
 
結果:5 ヶ月間にわたって、リアルタイムで電子処方された抗生物質アレルギー報告書から 106 例の患者が同定された。入院中の経口再チャレンジ試験に紹介された患者のうち、95.2%(n = 21)ペニシリンAALを除去することに成功し、最も成功率が高かった。22人のtype A reaction (非免疫学的な反応→嘔気・嘔吐、下痢、腹痛など)患者のうち14名(63.6%)がペニシリンAALを除去した。検討した患者において、制限付き抗生物質(第3世代または第4世代のセファロスポリン、フルオロキノロン、グリコペプチド、カルバペネム、ピペラシリン/タゾバクタム、リンコサミド、リネゾリド、ダプトマイシン)の処方が有意に減少が示された(介入前42.5% vs. 介入後17.9%, P = 0.0002)。
 
結論:薬剤師主導のAMSペニシリンアレルギー脱ラベル病棟ラウンドにより、ペニシリンAALsが減少し、制限された抗生物質の処方が減少した。このモデルは、既存のAMSプログラムを導入している他の病院でも実施可能である。
 
 
 この研究では、ペニシリンアレルギーの記載がある患者を対象としている。まずは、嘔吐・下痢などアレルギー反応とは関係ない症状(type A reaction)が出現したために、ペニシリンアレルギーと記載された患者に関しては、そのままAALを除去するように推奨し、63.6%が除去することができた。残りの患者に関しては、ペニシリンアレルギーを否定できないため、各種方法でペニシリンアレルギーの解除ができないかを検討している。経口再チャレンジ試験は、小児期の発疹や、内服開始後24時間以上経過してからの重症ではない発疹がでた既往のある患者を対象にしており(下記のsupplement figure参照)、ほとんどの症例でAALを除去することに成功している。
 多くの医療機関では、ペニシリンアレルギーとカルテ記載されると、漫然と評価もされず、患者は必要なときにもペニシリンが使用できないことが起きている。そのため、このようなペニシリンアレルギーの再評価は、患者へ最良の感染症治療を行うためにも、病院全体の抗菌薬適正使用の観点からも重要である。

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