Pertussis infection in infants and children: Clinical features and diagnosis
臨床症状
百日咳の症状は、年齢と免疫(ワクチン接種・感染既往の有無)により異なる
古典的症状 (catarrhal stage):発作性の咳嗽、吸気時のwhoop、咳嗽後嘔吐である。このような症状は、ワクチン接種歴のない10歳未満の小児の初感染で見られることが多い。
症状は3つのステージに分類される
・カタル期:他のウイルス性上気道炎のような症状である。軽度の咳嗽と鼻汁から始まる。通常、発熱は見られない。普通の感冒と異なるのは、百日咳の場合には、咳嗽は徐々に強くなってゆき、鼻汁は水様性のままである点である。カタル期は1-2週間持続する。
・痙咳期 (paroxysmal stage):この時期には、咳嗽発作はどんどん悪化する。咳嗽は特徴的で、咳嗽と咳嗽の間には、ほとんど息を吸うまもなく、咳が繰り返す。嘔吐やチアノーゼを呈し、息をしようともがくように見える。
咳発作の間に、発汗があることがある。夜間に咳嗽が悪化する。合併症もこの時期に発生することが多い。
咳嗽の後にはwhoopがみられる(79%程度の症例)。特に1歳未満の乳児で多く見られる。
咳嗽後の嘔吐は、百日咳の診断において、感度、特異度ともに高い所見である。1歳未満の乳児で見られることが多い。感度60%、特異度66%とされる。痙咳期は2-8週間続く。咳嗽発作は、最初の1-2週間で回数が増え、次の2-3週間はあまり変わらず、そのごゆっくりと減少してゆく。
・回復期(convalescent stage):咳嗽は数週間から数ヶ月かけて改善する。4週間以上咳嗽が持続するのは62%であった。5-16歳の小児を対象にした研究では咳嗽の期間は平均112日であった。
非典型的な症状
乳児:3ヶ月以下の乳児では非典型的な症状が起きうる
カタル期が、短いor無い。痙咳期に、嘔吐、喘ぎ呼吸、眼球突出、チアノーゼ、徐脈が見られる。咳嗽が発作でないこともある。合併症として、無呼吸、痙攣、呼吸不全、肺炎、肺高血圧、ショック、腎不全が見られ、死に至ることがある。特に、無呼吸、痙攣、PHがあるときには、入院が必要な重症になることが多い。死亡率は1%である。
早期の診断が重要であるが、実際には、難しい。
発作性の咳嗽、咳嗽後の嘔吐、咳嗽の持続、発熱なし、鼻閉なし、チアノーゼ、ALTE、無呼吸、痙攣、WBC高値、リンパ球高値などは百日咳を疑うきっかけになる。
ワクチン接種後の小児:軽症であることが多い、咳嗽の持続期間も短い、無呼吸発作も起こしにくい
年長児・青年期:無症状から軽度の咳嗽程度であることもある。喘鳴が聞こえることもある。
血液検査
リンパ球増多によるWBC増加が特徴的である。リンパ球の絶対数は、多くの症例で10000を超える。72%の症例でWBC増多、76%の症例でリンパ球増多を認める。乳児では、WBC数とリンパ球数が重症度に関連する。WBC 60000以上は、重症で、肺炎や肺高血圧のリスクが高い。生後90日以内の乳児でPICU入院した症例の検討では、入院時にWBC 30000以上と、咳嗽出現から5日以内にWBC 30000以上になった症例の予後は不良であった。
レントゲン:胸部レントゲンでは特異的な所見なし。
合併症の発症率は6%。6ヶ月未満の乳児に限定すると24%の症例で合併症を発症する。6ヶ月未満の37%が入院する。
無呼吸:6ヶ月未満の乳児に見られる。迷走神経反射が関連してる。6ヶ月未満の26%に見られたという報告もある。
肺炎:最も多い合併症の1つ。壊死性気管支炎、肺胞出血、浮腫などが病理で認められる。気道の線毛に大量のWBCと菌体が認めれる。マクロファージ内にも菌体を認める。肺炎の有無が予後因子になる。
死亡:6ヶ月未満の百日咳の死亡率は1%である。
診断
臨床的な疑い
生後4ヶ月未満: 特に発熱が無いのに咳嗽がある症例のうち、以下のような場合には疑う
咳嗽の改善がない、水様性の咳嗽が続いている、無呼吸、痙攣、チアノーゼ、嘔吐、体重増加不良
WBC増多(20000以上)、リンパ球増加(かつ50%以上)、肺炎、家庭内に遷延する咳嗽患者がいる
疑いのしきい値は低くするべき。
症状の進行が早いので、入院が考慮される。特に、無呼吸、チアノーゼ、WBC>30000の場合には特に入院を考慮。集中治療可能な施設での加療が望ましい。
生後4ヶ月以降: 発熱のない咳嗽患者で以下のような症例では疑う
発作性の乾性咳嗽が7日以上持続、水様性の鼻汁が持続、whoop、無呼吸、咳嗽後嘔吐、結膜下出血、睡眠障害がある、チアノーゼ、咳発作の間の発汗
百日咳の診断は、臨床診断である。多くの診断基準は、2週間以上続く咳嗽に加えて、咳発作・whoop・咳嗽後嘔吐の1つ以上を認めるものを、臨床的に百日咳と診断している。
CDCの診断基準は以下
Centers for Disease Control and Prevention case definition for pertussis
Clinical criteria
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Cough illness lasting ≥2 weeks, without a more likely diagnosis and at least one of the following:
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Laboratory criteria
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Isolation of Bordetella pertussis from a clinical specimen
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Positive PCR for pertussis
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Epidemiologic linkage
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Contact with a laboratory-confirmed case of pertussis*
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Case classification
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Confirmed
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Acute cough illness of any duration, with isolation of B. pertussis from a clinical specimen, or
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Clinical criteria (as above) and PCR positive for pertussis, or
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Clinical criteria (as above) and contact with a laboratory-confirmed case of pertussis*
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Probable
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Clinical criteria (as above) and absence of laboratory confirmation and no epidemiologic linkage, or
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For infants <1 year, acute cough illness of any duration with at least one of the following:
And:
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PCR: polymerase chain reaction.
Source: National Notifiable Diseases Surveillance System (NNDSS). Pertussis (Whooping Cough) (Bordetella pertussis): 2014 Case Definition. Centers for Disease Control and Prevention. Available at: http://wwwn.cdc.gov/nndss/conditions/pertussis/case-definition/2014/ (Accessed on June 28, 2018).
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検査室診断
検査室診断は、百日咳の診断には必須ではない。しかし、確定診断のため、暴露後予防が必要な症例では、検査室診断を行う。診断のために、治療を遅らせることが無いようにする。
検査の選択
発症から3週間未満
生後4ヶ月未満→PCRと培養検査
生後4ヶ月以上→PCRと培養検査と、血液検査(最終接種から1年以上経過している時、抗PT IgG 抗体)
発症から3週間が経過している
生後4ヶ月未満→PCRと培養検査
生後4ヶ月以降→血液検査(PT IgG)
確定診断
・急性の咳嗽があり、臨床検体からB. pertussisが検出
・CDCの診断基準を満たしたPCR陽性
・抗PT IgG抗体>100IU/mlまたはペア血清での上昇
Comparison of laboratory tests for the detection of Bordetella pertussis
Laboratory method
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Reported sensitivity*
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Reported specificity*
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Comments
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Culture of nasopharyngeal secretions
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20 to 80 percent
(decreases with increasing duration of cough)
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100 percent
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Polymerase chain reaction of nasopharyngeal secretions¶
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61 to 94 percent
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88 to 98 percent
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Serology (ELISA) blood
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60 to 95 percent
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Δ
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ELISA: enzyme-linked immunosorbent assay; CDC: Centers for Disease Control and Prevention; FDA: US Food and Drug Administration.
* Reported sensitivities and specificities taken from clinical or epidemiologic studies or vaccine trials.
¶ Compared with clinical case definitions+serology in most studies.
Δ Not readily available from epidemiologic studies. An investigation in German adults found a specificity of 84 percent using a clinician's clinical diagnosis as a gold standard (Schmitt-Grohé S, Cherry JD, Heininger U, et al. Pertussis in German adults. Clin Infect Dis 1995; 21:860).
鑑別診断
・結核
・ウイルス感染症(RSV、アデノ、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスなど)
・異物誤嚥
・アレルギー
・GER
・誤嚥性肺炎