保育園は、世代間の低学歴の再生産を緩和する
Childcare Attendance and Academic Achievement at Age 16 Years
JAMA Pediatr. 2021. Jun 7.
小児の誤嚥性肺炎の特徴
小児の誤嚥性肺炎は、神経疾患などの基礎疾患がある子が大半です。いわゆる「寝たきり」のため自覚症状の問診は困難(ほぼ無理)で、他覚的所見も取ることが難しいです。そのため、ついつい長期間の抗菌薬投与が多くなります。
今回紹介するのは、米国の小児病院で行われた市中肺炎(CAP)と誤嚥性肺炎の患者特性や入院の特徴の比較研究です。予想されたとおり、基礎疾患がある子に多く、入院期間が長く・費用が高く、より重症化しやすいです。
一方で、抗菌薬適正使用については改善の余地があるデータかと思いました。
要点
・小児の誤嚥性肺炎は、複雑な慢性疾患を有する医療的ケア児に多い
・入院期間が長い、費用が高い、ICU入院率が高い、再入院率が高い。
Characteristics of Children Hospitalized With Aspiration Pneumonia
Hosp Pediatr . 2016 Nov;6(11):659-666.
- データは、米国の47の小児病院のデータベース(PHIS)を使用した後方視的コホート研究。
- 米国の小児の入院件数の15%程度を占める人数。
- 誤嚥性肺炎(n=198、1.6%)は、CAP(n=425、0.4%、P<0.001)と比較して死亡率が高い。
- 誤嚥性肺炎は、CAPに比べて複雑な慢性疾患(CCC)を持っている割合が多い(87%対36%、P < 0.001)。
- 誤嚥性肺炎の66%、CAPの15%が、医療的ケア児。
- ICUでの治療を必要とする割合は、誤嚥性肺炎で3倍高かった(33% vs. 12%、P < 0.001)。
- 30日以内の再入院は、誤嚥性肺炎で36%、CAPで16%(P < 0.001)。
→ちょっと高すぎる。 - 誤嚥性肺炎の小児では、セファロスポリン(46%)、クリンダマイシン(44%)、アンピシリン/スルバクタム(40%)がよく処方されている
→このデータからは、治療チームが起炎菌として嫌気性菌を重要と考えていることが示唆される。しかし、成人では嫌気性菌のカバーがそれほど重要ではないことが分かっており、セフトリアキソンでも治療可能。ここは改善の余地がある。
- CAPでは、24.6%の症例でのみペニシリン系抗菌薬が使用されている。
→ここも改善の余地はある。(より重症をみている可能性も高いが。)
急性副鼻腔炎の合併症
AAPの副鼻腔炎のガイドラインのから、急性副鼻腔炎の合併症をまとめました。
ガイドライン本文はコチラです。
Clinical practice guideline for the diagnosis and management of acute bacterial sinusitis in children aged 1 to 18 years
Pediatrics. 2013;132:e262.
急性副鼻腔炎の合併症の発生部位は、
「頭」と「眼」である。
・頭の合併症(intracranial complications):前頭洞炎からの波及が多い
Pott's puffy tumor(前頭骨の骨髄炎で前額部が腫脹する)
Pott's puffy tumorの国内報告例(小児感染免疫 2006;18:266)
・眼の合併症(orbital complications):ほとんどが篩骨洞炎から波及する
両者の違いはコチラも御覧ください。
眼窩蜂窩織炎と眼科周囲蜂窩織炎は似ているけど全然違う - 小児感染症科医のお勉強ノート
先天性サイトメガロウイルス感染症の診断には乾燥ろ紙血が使える
先天性サイトメガロウイルス(cCMV)感染症は、胎児を妊娠中の母親がサイトメガロウイルス(CMV)に感染して、子宮内の胎児にCMVのが感染する疾患です。
脳内の石灰化や、聴力障害、運動発達遅延などの重篤な後遺症を残します。出生後に、治療をすることで聴力予後の改善が期待できることから、適切なスクリーニング検査ができると良いのですが、広まっていないのが現状です。
また、出生後しばらくしてCMV感染が判明した時に、それが先天性なのか後天性なのか区別することは、その子の予後にとって重要です。
先天性か後天性の判断をするために、新生児スクリーニングで採取した乾燥ろ紙血を使ったり、日本では臍帯(お母さんが産院からもらうへその緒)を一部頂いて、CMVのPCR検査を行います。
これまで、乾燥ろ紙血の検査感度はあまり良くない(つまり陰性でもcCMVを否定できない)と言われていたのですが、今回の研究では技術的な進歩もあり、感度が良くなっていますよという報告です。
Sensitivity of Dried Blood Spot Testing for Detection of Congenital Cytomegalovirus Infection
JAMA Pediatrics. 2021; 175:e205441.
生後すぐのスクリーニング検査としては、尿が一番良く、次が唾液であることに違いはないのですが、生後時間が経過してから、CMV感染が分かった時に、乾燥ろ紙血を使用すると、かなり良い感度でcCMV感染の診断ができることが分かります。