抗菌薬の適正使用は、薬剤耐性菌対策の重要な手段です。しかし、途上国を中心に、市中の薬局で抗菌薬が処方箋なしに買えてしまう現状があります。先進国の多くは、抗菌薬を手に入れるには、処方箋が必要です。
この調査は、米国の救急外来を受診した患者の4割以上が処方箋なしに抗菌薬を使用しており、3人に1人は今後もそのように抗菌薬を使用したいと思っているという調査です。
黒人・ヒスパニック系住民が、対象者の多くを占めており、米国を代表する値では無いと思いますが、特定のグループでは、このような抗菌薬の不適切使用が日常的に行われているのが現状なのだと思います。
翻って、日本では、受診への経済的な負担は、米国よりは少ないでしょうが、日本語を話せない住民の受診へのハードルは高く、外国人コミュニティで、不適切な抗菌薬使用がある可能性もあります。
要点
・3人に1人が、処方箋なしに抗菌薬を使うつもり
・22.3%が、友人や親戚から抗菌薬をもらって、使うつもり
Antibiotic Use Without a Prescription: A Multisite Survey of Patient, Health System, and Encounter Characteristics
Clin Infect Dis. 2023 Aug 22;77(4):510-517.
背景
処方箋なしで抗菌薬を使用することは、安全では無く、薬剤耐性のリスクを高める可能性がある。(1)米国内で購入した、(2)友人や親戚から入手した、(3)海外で購入した、または(4)これらのいずれかの入手先から入手した抗菌薬を使用ることに対する、患者・医療システム・臨床的因子の影響を評価した。
方法
結果
調査回答者564名(黒人33%、ヒスパニックまたはラテン系47%)のうち、処方箋なしで抗菌薬を使用したことがあると回答したのは246名(43.6%)だった。将来、処方箋なしで抗菌薬を使用する意向があると回答したのは177名(31.4%)であった。体調が悪くなった場合、回答者は、友人や親戚から入手した抗菌薬(564人中22.3%)、米国内で購入した抗菌薬(19.1%)、海外で購入した抗菌薬(17.9%)を服用すると回答した。若年、健康保険に非加入、受診費用が高いと認識していることが、処方箋なしの抗菌薬を使用する意思の予測因子であった。その他の予測因子は、受診のための交通手段が無い、受診時の言語障壁、ヒスパニック系またはラテン系住民、スペイン語使用者であった。
結論
受診に経済的障壁がある健康保険未加入の患者は、より危険な非処方抗菌薬を使用する可能性が高い。米国の細分化された高額な医療制度の弊害であり、抗菌薬耐性の増加と患者への危害をもたらす可能性がある。